黄河流域の新石器時代人類のゲノムデータ

 黄河流域の新石器時代人類のゲノムデータを報告した研究(Ma et al., 2025)が公表されました。本論文は、黄河中流域に位置する中華人民共和国河南省鄭州市の大河村(Dahecun)遺跡で発見された、新石器時代の人類2個体の新たなゲノムデータを報告しています。これまで、仰韶(Yangshao)文化人類集団と比較して龍山(Longs…
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ヨーロッパのフンと匈奴との関係

 カルパチア盆地古代人の新たなゲノムデータを報告した研究(Gnecchi-Ruscone et al., 2025)が公表されました。ヨーロッパのフン人が誰でどこから来たのか、というその起源に関する問題は、フン人の歴史的影響を考えると、学者の関心を超えて、文化的意識にまで浸透してきました。フン人を匈奴と関連づけた最初の仮説以降、学者はこ…
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ヨーロッパ中央部最初期農耕民の社会的および遺伝的多様性

 古代ゲノムデータに基づいてヨーロッパ中央部最初期農耕民の社会的および遺伝的多様性を推測した研究(Gelabert et al., 2025)が公表されました。本論文は、ヨーロッパの広範な地域に最初に農耕を広めた線形陶器(Linear Pottery、Linearbandkeramik、略してLBK)文化と関連する人類遺骸を中心に、それ…
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大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第8回「逆襲の『金々先生』」

 これまで、蔦屋重三郎の版元業への参入を中心に物語が動いており、話の核がしっかりしていることとともに、重三郎の才覚と行動力によって話が展開していることに本作の魅力はあります。重三郎の版元業への本格的参入は順風満帆とはいきませんが、それでも前進していると言えそうで、今回も重三郎の版元業への参入が核となっていました。『節用集』の偽版で捕まり…
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低品質のゲノムデータに基づく分析結果の訂正

 最近当ブログで、ヨーロッパの初期現生人類(Homo sapiens)のゲノムデータに関する研究(Sümer et al., 2025)を取り上げました。その研究では、ドイツのテューリンゲン州(Thuringia)のオーラ川(Orla River)流域に位置するラニス(Ranis)のイルゼン洞窟(Ilsenhöhle)で発見された初期現…
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『卑弥呼』第145話「決断」

 『ビッグコミックオリジナル』2025年3月5日号掲載分の感想です。前回は、暈(クマ)国のトンカラリンの洞窟の中で、ニニギ(ヤエト)が、養父母の仇と信じている山社(ヤマト)の女王、つまり実母である(ニニギはこのことを知りませんが)ヤノハの殺害を決意するところで終了しました。今回は、モモソが、ヤノハは実子のヤエト(ニニギ)に殺される、と預…
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黒田基樹『増補 戦国大名』

 平凡社ライブラリーの一冊として平凡社より2023年4月に刊行されました。本書は、平凡社新書の一冊として2014年1月に刊行され、その増補版となります。本書の親本は私も購入して読みましたが(関連記事)、本棚にあるはずなのに、あまりにも乱雑に管理していて見つけられなかったこともあり、本書を購入しました。まあ、補論2本が追加されているので、…
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ドイツの初期現生人類のゲノムデータ

 ドイツで発見された初期現生人類(Homo sapiens)遺骸のゲノムデータを報告した研究(Sümer et al., 2025)が報道されました。この研究の概要は、すでに一昨年(2023年)9月にヒト進化研究ヨーロッパ協会第13回総会で報告され、当ブログで取り上げており(関連記事)、その頃からたいへん注目していたので、学術誌への掲載…
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継承としての文化進化

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、文化進化を継承の観点から検証した研究(Bentley, and O'Brien., 2024)が公表されました。本論文は、文化の変化と継承が、社会的帰属意識や文化価値や行動の観点では、さまざまな選択の範囲において主体性や意図性から生じる、との一部の考古学者の見解を、多くの考古学的記録によって検証し、…
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先史時代ヨーロッパの社会構造と人類の居住形態

 最近、鉄器時代ブリテン島人類集団の古代ゲノム研究(Cassidy et al., 2025)を取り上げました。その研究では、鉄器時代ブリテン島の人類集団における母方居住が示されました。これはヨーロッパ先史時代において、母方居住を強く示唆する直接的証拠としては最初の事例となります。その研究で指摘されていたように、民族誌の調査において父方…
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過去330万年間の石器技術から推測される文化の累積

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、過去330万年間の石器技術から人類史における文化累積を推測した研究(Paige, and Perreault., 2024)が公表されました。現生人類(Homo sapiens)は独特な多様な生態学的生息地を占めています。ヒトは累積文化を通じて熱帯雨林や北極圏のツンドラへと拡大しました。累積文化は、…
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大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第7回「好機到来『籬の花』」

 今回は幕府政治の場面が描かれず、蔦屋重三郎の版元業界への参入の奮闘が描かれました。本作の主人公はあくまでも蔦屋重三郎ですから、幕府政治が描かれない回は今後もありそうです。鱗形屋孫兵衛が『節用集』の偽版で捕まり、拷問を受け、もう鱗形屋は終わった、と西村屋与八や鶴屋喜右衛門など地本問屋は判断し、鱗形屋が出版していた『吉原細見』を代わりに刊…
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唐代の山東人類集団のゲノムデータ

 唐代の山東人類集団のゲノムデータを報告した研究(Wang et al., 2025)が公表されました。本論文は、現在の中華人民共和国山東省の傅大門(Fudamen)墓地で発見された、唐王朝期の人類遺骸のゲノムデータを報告しています。この研究では、傅大門墓地の唐代の被葬者17個体のSNP(Single Nucleotide Polymo…
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本村凌二『地中海世界の歴史5 勝利を愛する人々 共和政ローマ』

 講談社選書メチエの一冊として、2025年1月に刊行されました。電子書籍での購入です。『地中海世界の歴史』全8巻も後半に入り、いよいよ著者が専門とするローマ史となり、4巻までよりもさらに筆が乗っている感もあります。本書は、ローマの起源から第三次ポエニ戦争の終結までを対象としています。この時点ではまだローマ帝政期ではありませんが、第三次ポ…
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白亜紀後期の初期鳥類の生態的多様性

 白亜紀後期(6920万~6840万年前頃)の初期鳥類の生態的多様性関する研究(Torres et al., 2025)が公表されました。白亜紀のクラウン群鳥類(鳥綱)系統の化石記録は、極めてまれだが、初期鳥類の複数の分岐にわたる主要な生態的変化を解明する上で非常に重要である。クラウン群鳥類と推定される既知で最初期の鳥類の一種であるヴェ…
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雌マウスにおける母親由来のX染色体の認知機能および脳の老化への影響

 雌マウスにおける母親由来のX染色体の認知機能および脳の老化への影響に関する研究(Abdulai-Saiku et al., 2025)が公表されました。哺乳類の雌の細胞には2本のX染色体があり、一方は母親に、もう一方は父親に由来します。発生中に片方のX染色体が無作為に不活性化され、その結果、母親由来のX(Xₘ)染色体あるいは父親由来の…
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豊昇龍関の横綱昇進について

 今年(2025年)初場所(関連記事)後に、豊昇龍関が横綱に昇進しました。初場所の記事でも述べたように、これではかなり甘い基準での横綱昇進となるので、初場所後の横綱昇進は見送るべきと考えていましたが、その後やや見解が変わりました。豊昇龍関のかなり甘い基準での横綱昇進が、今年初場所で照ノ富士関が引退し、横綱不在になったことと、今年10月の…
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大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第6回「鱗剥がれた『節用集』」

 今回は、蔦屋重三郎と鱗形屋孫兵衛との関係を軸に話が展開しました。重三郎は孫兵衛に嵌められ、利用されているとも言える関係ですが、それでも今は、孫兵衛と組むのが最善と考えて、隠忍自重しています。とはいえ、重三郎にも割り切れないところはあるようで、そうした人間関係の機微も今回は描かれました。重三郎は、鱗形屋が『節用集』の偽版に手を染めている…
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『ナショナルジオグラフィック』2025年2月号「謎の「ほかの」人類を探す」

 『ナショナルジオグラフィック』2025年2月号の表題の特集を読みました。まず冒頭で、30万年前頃には現生人類(Homo sapiens)以外の人類が少なくとも6種いた、と指摘されており、その復元模型の写真が掲載されています。この6種の人類とは、ホモ・ナレディ(Homo naledi)、ホモ・ハイデルベルゲンシス(Homo heidel…
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移動し続ける人類

 人類の移動が続いている、との観点から最近の重要な古代ゲノム研究を取り上げた解説(Gross., 2025)が公表されました。本論文は、最近の重要な古代ゲノム研究を解説し、現生人類(Homo sapiens)が過去に移動してきたことを示すとともに、今後も人類が移動し続けるだろう、と指摘しています。近年の重要な古代ゲノム研究が解説されてい…
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長谷川岳男『スパルタ 古代ギリシアの神話と実像』

 文春新書の一冊として、文藝春秋社より2024年12月に刊行されました。電子書籍での購入です。古代ギリシア史は日本でも一定以上の人気があるように思われ、一般向けの本も少なからず刊行されており、当ブログでも複数取り上げています。ただ、そうした一般向けの本では、史料の問題もあってアテナイを中心とした構成になることが多く、そこではスパルタはア…
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『卑弥呼』第144話「再生」

 『ビッグコミックオリジナル』2025年2月20日号掲載分の感想です。前回は、暈(クマ)国のトンカラリンの洞窟の深部の大きな空間に置き去りにされたニニギ(ヤエト)が、自分は暗闇の中で死ぬ、と覚悟したところで終了しました。今回は、かつてヤノハがトンカラリンの試練を受けたさいに、ヒルメやイクメなど、暈の国にある「日の巫女」集団の学舎である種…
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完新世の山東半島の人口史および日本列島との関係

 完新世の山東半島の人口史および日本列島との関係に関する研究(Liu et al., 2025)が公表されました。Twitterにて大凌河様よりご教示いただき、たいへん興味深い論文なので、当ブログで取り上げます。なお、[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。本論文は、6000~1500年前頃の…
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後期新石器時代から鉄器時代の黄河中流~下流域の人口史

 古代ゲノムデータに基づく後期新石器時代から鉄器時代の黄河中流~下流域の人口史に関する研究(Fang et al., 2025)が公表されました。本論文は、後期新石器時代から鉄器時代の黄河中流域の中原~黄河下流域の海岱(Haidai)地域の古代人31個体の新たなゲノムデータを報告し、既知の古代人および現代人のゲノムデータと比較し、黄河中…
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中原における後期新石器時代以降の人類集団の長期の遺伝的安定性

 中原における後期新石器時代以降の人類集団の長期の遺伝的安定性を報告した研究(Ma et al., 2025)が公表されました。本論文は、古代人と現代人のゲノムデータを使用し、中原において後期新石器時代以降には人類集団の遺伝的構成が現在まで長期にわたって安定していたことを示しています。この中原の後期新石器時代集団の祖先系統(祖先系譜、祖…
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大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第5回「蔦に唐丸因果の蔓」

 今回は、唐丸を中心に話が展開しました。唐丸は初回冒頭の明和の大火で蔦屋重三郎と知り合い、その後は重三郎の弟分のようにともに蔦屋で働いていたので、重要人物であることは明らかでしょう。私は初回の時点で、唐丸は喜多川歌麿だと確信し、前回、唐丸が絵の才能を見せたことで、作中ではまだ明示されていないものの、唐丸は歌麿なのだ、と改めて考えていまし…
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鉄器時代ブリテン島の母方居住

 鉄器時代ブリテン島における母方居住の事例を報告した研究(Cassidy et al., 2025)が公表されました。本論文は、紀元前100~紀元後100年頃にイングランド南部の海岸地域を占拠していた、デュロトリゲス人(Durotriges)の集落と関連する、鉄器時代墓地の被葬者57個体のゲノム解析結果を報告しています。後期鉄器時代のデ…
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奥泉光、原武史『天皇問答』

 河出新書の一冊として、河出書房新社より2025年1月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、前書きを作家の奥泉光氏、後書きを日本政治思想史専攻の原武史氏が担当し、著者二人の対談が主要な構成となっています。前近代の天皇にも多少言及されていますが、主要な対象は近現代の天皇制で、とくに昭和天皇が詳しく取り上げられています。原武史氏の…
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