トマトの甘み

 トマト(Solanum lycopersicum)の甘みに関する研究(Zhang et al., 2024)が公表されました。トマトは糖度が消費者の嗜好と強く相関しており、大抵の消費者は甘い果実を好みます。しかし、糖度は果実の大きさとは逆相関しており、生産者は味の質よりも収量を優先するため、商業品種は全般的に糖度が低くなっています。本…
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オタマジャクシの起源

 オタマジャクシの起源に関する研究(Chuliver et al., 2024)が報道されました。無尾類は、水生の幼生期(オタマジャクシ)とそれに続く成体期(カエル)からなる二相性の生活環を特徴とし、幼生期から成体期へは、形態と生理が劇的に変化する変態期を介して移行します。現生のオタマジャクシは形態がたいへん多様で、生態学的にも重要な存…
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ブルガリアの初期現生人類の年代

 ヒト進化研究ヨーロッパ協会第14回総会で、ブルガリアで発見された初期現生人類(Homo sapiens)の年代に関する研究(Higham et al., 2024)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P82)。ブルガリアのコザーニカ(Kozarnika)遺跡は、ヨーロッパの下部旧石器時代と中部旧石器時代と上部旧…
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大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第4回「『雛形若菜』の甘い罠」

 今回も、吉原を中心とした蔦屋重三郎の話を中心にしつつ、江戸幕府中枢の政治劇との二元構成となっていました。この構成は、最終回まで基本的には変わらないのでしょう。現時点では、初回に重三郎と田沼意次が会った以外には、重三郎の話と幕府中枢の政治劇が別々に展開していますが、現時点では平賀源内を通じて重三郎と田沼意次が間接的につながっています。今…
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大相撲初場所千秋楽

 琴櫻関と豊昇龍関の横綱昇進とともに、2場所連続で休場していた横綱の照ノ富士関の進退にも注目していましたが、照ノ富士関は初日に負け、2日目と3日目は苦戦しつつも勝ったものの、4日目に負けて5日目から休場となり、その晩に引退すると報道されました。横綱昇進時から、照ノ富士関が横綱を長く務めるのは難しいだろう、と予想していた相撲愛好者は私も含…
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更新世人類の血液型

 更新世人類の血液型に関する研究(Mazières et al., 2025)が公表されました。本論文は後期更新世となる12万~2万年前頃の人類のゲノムデータから血液型の多様化を評価し、これには現生人類(Homo sapiens)のみならず、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)および種区分未定のホモ属であるデ…
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Paul Pettitt『ホモ・サピエンス再発見 科学が書き換えた人類の進化』

 ポール・ペティット(Paul Pettitt)著、篠田謙一監訳、武井摩利訳で、創元社より2024年11月に刊行されました。原書の刊行は2022年です。電子書籍での購入です。本書は、おもに現生人類(Homo sapiens)を対象とした人類進化史の概説で、著者は更新世の考古学を専攻しているので、考古学の記述が詳しくなっていますが、21世…
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懐かしい論争の盛り上がり

 懐旧の情は加齢を反映しているのかもしれず、最近では揚げ物を食べたいとは思わなくなったことも、加齢のためなのか、と考えることもあります。まあ、炒め物は食べることもあるので、油ものを受けつけなくなったのではなく、揚げ物というか衣で包んだ食べ物は重たく感じるようになって受けつけなくなった感じで、焼売を食べることもなくなりました。懐旧の情とい…
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人類進化史における少ない情報からの推測と前提化

 2023年10月3日に当ブログで取り上げた、ユーラシア西部における後期更新世人類の進化を再検討した研究(関連記事)では、少ない証拠からの安易な推測、さらにはその推測(仮定)の前提化(事実化)が厳しく批判されており、私も多々反省させられましたが、私の見識では、それ以降もつい、安易な推測とその事実化に気づかず陥ってしまったことは少なくなか…
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ペルーのモチェ文化期被葬者の学際的分析

 ペルーのモチェ(Moche)文化期被葬者の学際的な分析結果を報告した研究(Quilter et al., 2025)が公表されました。本論文は、ペルーの北部沿岸のチカマ渓谷(Chicama Valley)のエル・ブルホ(El Brujo)遺跡にある、ピラミッド型の彩色神殿であるワカ・カオ・ビエホ(Huaca Cao Viejo)に埋葬…
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『卑弥呼』第143話「置き去り」

 『ビッグコミックオリジナル』2025年2月5日号掲載分の感想です。前号は休載だったので、久々の感があります。前回は、大地震が収まった直後の暈(クマ)国の鞠智(ククチ)の里(現在の熊本県菊池市でしょうか)にて、暈国の大夫で実質的な最高権力者である鞠智彦(ククチヒコ)が配下のウガヤに、ニニギ(ヤエト)こそ本物の日見彦(ヒミヒコ)だ、と語り…
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大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第3回「千客万来『一目千本』」

 今回も重三郎の吉原再建の試みと幕府政治が描かれ、重三郎が吉原を再建しようと奮闘し、版元に深く関わっていく流れが序盤の柱となっており、軸がしっかりしているように思います。吉原細見の改訂に深く関わった重三郎に対して、養父の駿河屋市右衛門は激昂します。重三郎が今度は女郎を花に見立てた入銀本の制作に着手すると、女郎屋や引手茶屋の主人がことごと…
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味でヒトを認識する蚊

 蚊が味でヒトを認識することについての研究(Baik et al., 2024)が公表されました。昆虫の行動には味覚系によって制御されているものが多いものの、蚊において、味物質がどのように符号化され、そうした物質が必須な行動をどのように調節しているのかについては、ほとんど知られていません。本論文は、侵略性の高い疾病媒介蚊であるヒトスジシ…
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佐藤淳『進化生物学 DNAで学ぶ哺乳類の多様性』

 東京大学出版会より2024年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は哺乳類を対象とし、進化生物学の入門書というか教科書的な性格もあり、DNAおよびその解析や染色体など遺伝の基本的な構造も解説していて、丁寧な構成になっています。本書は進化の前提として有限性を強調しており、ここが本書の特徴になっているように思います。本書は基本的…
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クラインフェルター症候群の男性不妊

 クラインフェルター症候群(Klinefelter syndrome、略してKS)の男性不妊に関する研究(Lu et al., 2024)が公表されました。X連鎖遺伝子の遺伝子量は、胎児生殖細胞(fetal germ cell、略してFGC)の発生とともに正確に調節されます。しかし、ヒトでのX連鎖遺伝子の遺伝子量異常が、FGCの発生を損…
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八束脛洞窟遺跡の弥生時代中期人類のゲノムデータ

 群馬県利根郡みなかみ町後閑の八束脛洞窟遺跡で発見された弥生時代中期の人類のゲノムデータを報告した研究(神澤他.,2024)が公表されました。私の観測範囲ではTwitterにおいて話題になっていたので、読みました。弥生時代の日本列島には、ユーラシア東方大陸部から日本列島に移民が到来してきて、この「渡来系」集団と縄文時代から日本列島に存在…
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国武貞克「日本列島後期旧石器文化の起源と成立に関する試論」

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、日本列島の後期旧石器文化の起源と成立についての研究(国武., 2023)が公表されました。日本列島最古級の石刃石器群が長野県佐久市の香坂山遺跡で確認されており、その起源はユーラシアのIUP(Initial Upper Paleolithic、初期上部旧石器)にある、と推測されています(関連記事)。日…
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ユーラシア東部の後期第四紀の人類の多様性

 ユーラシア東部の後期第四紀の人類に関する解説(Bae, and Wu., 2024)が公表されました。本論文は、ユーラシア東部の後期第四紀、より具体的にはおもに30万~5万年前頃の多様な非ホモ属に関する簡潔な解説で、ホモ属でも現生人類(Homo sapiens)は基本的に対象外となっています。本論文は対象地域をアジア東部としていますが…
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大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第2回「吉原細見『嗚呼御江戸』」

 今回は、吉原の案内書である吉原細見の制作を中心に話が展開しました。蔦屋重三郎は細見の序文に、才人として著名な平賀源内を起用しようと考えて、奔走します。重三郎は早々に源内と会うことに成功しますが、この時点では源内がそうだとは名乗らず、重三郎が途中までそう気づいていないことで喜劇調となっています。こうしたところは、娯楽ドラマとして工夫され…
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ワラセアの人口史

 現代人の新たなゲノムデータと既存の現代人および古代人のゲノムデータからワラセアの人口史を検証した研究(Purnomo et al., 2024)が公表されました。本論文は、ワラセア諸島とインドネシアの西パプア地域のヒトの遺伝的歴史の包括的研究を提示し、これには、ほぼ以前には報告されていなかった人口集団の、新たに配列決定された254個体…
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森井裕一編『エリア・スタディーズ151 ドイツの歴史を知るための50章』

 明石書店より2016年10月に刊行されました。本書はヨーロッパの地理的中心に位置するドイツの重要性と、ドイツが固定的存在ではなく、歴史において変化してきた、との観点からドイツのさまざまな側面を浮き彫りにします。本書の通史編では意図的に近現代の比重をやや高めたそうですが、これは、ヨーロッパ連合(EU)のなかでますます存在感を強めるドイツ…
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新たな手法による中世前期ヨーロッパの人口史

 新たな手法によって中世前期ヨーロッパの人口史を検証した研究(Speidel et al., 2025)が公表されました。本論文は、新たに開発された「Twigstats」と呼ばれる手法を用いて、中世前期ヨーロッパの人口史を検証しています。この新手法は遺伝的構成の類似した集団間の相互作用をじゅうらいよりも高解像度で推測でき、他の地域や時代…
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ノルウェーで発見された中世の文献に見える人物のゲノムデータ

 ノルウェーで発見された中世の文献に見える人物のゲノムデータを報告した研究(Ellegaard et al., 2024)が公表されました。本論文は、ノルウェー中央部のスヴェッレスボルグ(Sverresborg)城跡の中世の井戸から発掘されたヒト遺骸のゲノムデータと放射性炭素年代と窒素(N)や炭素(C)の同位体データを報告しています。ス…
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チベット高原の古代のウイルスのゲノム

 チベット高原の古代のウイルスのゲノムを報告した研究(Zhong et al., 2025)が公表されました。氷河は、微生物を含めて、気候と生態系に関する時系列情報を保管しており、その氷を採取することで、これらの微生物群集の多様性に影響を与える要因を、数百年から数千年の期間にわたって評価する機会が得られます。長期間にわたる生態系の変化を…
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河北省で発見された中期更新世ホモ属遺骸

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、中華人民共和国河北省張家口市陽原県の許家窯(Xujiayao、略してXJY)遺跡で発見された中期更新世のホモ属遺骸の形態学的分析結果を報告した研究(Zhang et al., 2024)が公表されました。許家窯遺跡は許家窰(Houjiayao)遺跡とも呼ばれています。本論文は主成分分析(princi…
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大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第1回「ありがた山の寒がらす」

 いよいよ今年(2025年)の大河ドラマが始まりました。近年は大河ドラマの感想記事を惰性で執筆しているところも多分にありますが、当ブログを始めてから昨年まで18年連続で大河ドラマの初回の感想記事を掲載してきたので、今年も少なくとも初回記事は執筆します。まあこの間の大河ドラマ感想記事の執筆は、2008年放送の『篤姫』は初回だけで、2009…
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ユーラシア東部圏の人類史(追記有)

 おもに広範な古代ゲノム研究に基づくユーラシア東部圏の人類史の総説(Bennett et al., 2024)が公表されました。本論文は、現生人類(Homo sapiens)のみならず、ホモ・エレクトス(Homo erectus)やネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のホモ属であるデニソワ人(De…
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福井紳一『戦中史』

 KADOKAWAより2018年1月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は近代以降の日本について、満洲事変~敗戦まで(1931~1945年)を狭義の「戦中史」、近現代を広義の「戦中史」と把握し、おもに戦前を対象として、戦争の視点から日本近代史を検証します。そのため、本書の叙述は明治維新にさかのぼりますが、敗戦後の歴史も、朝鮮戦争…
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再来年(2027年)の大河ドラマの予想

 そろそろ再来年(2027年)の大河ドラマが発表されそうなので、予想します。まず大前提として、2年連続で時代が重なることはあまりなく、多少重なったとしても舞台となる地域は異なる場合がほとんどのようだ、ということが挙げられます。来年は豊臣秀長が主人公なので、いわゆる戦国の三英傑が主人公にとって身近な人物として登場するような作品にはならない…
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古人類学の記事のまとめ(54)2024年9月~2024年12月

 2024年9月~2024年12月のこのブログの古人類学関連の記事を以下に整理しておきます。なお、過去のまとめについては、2024年9月~2024年12月の古人類学関連の記事の後に一括して記載します。とくに重要と判断した研究については、冒頭に★をつけています。私以外の人には役立たないまとめでしょうが、当ブログは不特定多数の読者がいるとい…
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謹賀新年

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。ついに2025年を迎えました。もう3年近く前となる2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの直接的な軍事侵略は今も続いており、中東情勢もシリアのアサド政権の急速な崩壊など緊張状態が続くなかで、世界情勢の見通しがさらに暗くなった感もあります。こうした国際情勢の悪化…
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