世界規模で遺伝と言語伝達の関係を検証した研究(Pichkar et al., 2024)が公表されました。文化的慣行は、誰が誰から学ぶかに影響を及ぼすことによって、学習行動の伝達を形成できます。文化的伝統によって人々は母親もしくは母方親族から言語を学ぶ傾向があるのならば、この偏った文化的伝達は言語の差異と母系継承の遺伝的差異との間の予…
唐代の人類遺骸のゲノムデータを報告した研究(Lv et al., 2024)が公表されました。唐代、とくにその都である長安(Chang’an)は、「国際色」が豊かだった、と一般的に考えられているように思います。本論文は、現在の中華人民共和国陝西省西安(Xi’an)市に位置する、唐代の長安の幸福林帯(Xingfulindai、略してXF…
黄河中流域の新石器時代人類のゲノムデータを報告した研究(Li et al., 2024)が公表されました。本論文は、黄河中流域の代表的な新石器時代文化である仰韶(Yangshao)文化の基準遺跡となる仰韶遺跡の、仰韶文化~龍山(Longshan)文化期の人類のゲノムデータを報告し、これまで認識されていなかった、後期龍山文化期の人類集団…
現代日本人集団における縄文時代集団からの遺伝的影響に関する研究(Yamamoto et al., 2024)が公表されました。本論文は、現代日本人集団の遺伝的祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)が、縄文時代の狩猟採集民的構成要素とアジア東部(East Asia、略してEAS)的構成要素とアジア北東部(Northe…
古代ゲノムデータに基づいてコーカサスからヨーロッパ東部への農耕の拡大を示した研究(Zhur et al., 2024)が公表されました。北コーカサスにおける最古級の農耕集団はダルクベティ・メショコ(Darkveti-Meshoko)文化ですが、この文化集団から近隣の草原地帯牧畜民への遺伝的影響は不明です。本論文は、北コーカサスの最古級…
社会的協力の維持に関する研究(Michel-Mata et al., 2024)が公表されました。評判はヒト社会においてきわめて重要で、個々人はその社会的地位に応じて異なる扱いを受けます。たとえば、他者を助けて良い評判を獲得すると、その人は第三者から見返りを受ける可能性が高くなります。このように広範な協力を得るには、評判が行動を正確に…
古代ゲノムデータに基づいてアフリカ最南端の人類集団の長期にわたる遺伝的連続を報告した研究(Gretzinger et al., 2024)が公表されました。本論文は、南アフリカ共和国のオークハースト(Oakhurst)岩陰遺跡の初期完新世から後期石器時代(Later Stone Age、略してLSA)末までの人類9個体や、他の古代人お…
無人航空機によるライダー(light detection and ranging、略してLiDAR、光による検出と測距)で明らかになったアジア中央部の大規模な中世都市を報告した研究(Frachetti et al., 2024)が報道されました。航空機によるLiDARは、とくに密な植生で遺跡の視認性が損なわれている場所において、考古学…
農耕によるアミラーゼ関連遺伝子の進化に関する研究(Bolognini et al., 2024)が公表されました。農耕の採用は、ヒト集団においてデンプンに富む食餌への急激な変化を引き起こしました。アミラーゼ遺伝子はデンプンの消化を促進し、デンプン摂取量の多い一部の現代人集団ではアミラーゼ遺伝子のコピー数の増加が観察されていますが、選択…