初期の小型哺乳類の成長に関する研究(Panciroli et al., 2024)が公表されました。現生の哺乳類群は通常、幼体期に急速に成長し、成体期には成長が停止します。成体の体格が小さい種は一般的に、体格の大きい種よりも発育が早く、成熟が若く、寿命が短く、出産数が多くなります。一方で、最初期の哺乳型類(哺乳類およびそれらにごく近縁…
ドイツ南部で発見された紀元前千年紀の人類のゲノムデータを報告した研究(Gretzinger et al., 2024)が公表されました。アルプス山脈以北のヨーロッパの鉄器時代は、ハルシュタット(Hallstatt)文化(紀元前800~紀元前450年頃)とララ・テーヌ(La Tène)文化(紀元前450~紀元前50年頃)という二つの文化…
中国南西部に位置する貴州省の明代の人類のゲノムデータを報告した研究(Zhang et al., 2024)が公表されました。本論文は、貴州省貴陽(Guiyang)市の大松山(Dasongshan、略してDSS)遺跡で発見された人類7個体のゲノムデータを報告し、現代人のみならず、上部旧石器時代(Upper Palaeolithic、略し…
新石器時代におけるヒトとイヌへのペスト感染を報告した研究(Susat et al., 2024)が公表されました。ペスト菌(Yersinia pestis)は完新世において人類に大きな影響を及ぼしており、高い関心を集めてきました。ペスト菌は歴史時代の感染がとくに有名ですが、先史時代においてもすでに新石器時代(Neolithic、略して…
野生アフリカゾウ(Loxodonta africana)の「名前」での呼びかけに関する研究(Pardo et al., 2024)が公表されました。個体名はヒト系統の普遍的特徴ですが、他の種には類例がほとんど存在しません。非ヒト動物では、イルカやオウムは相手の呼びかけを模倣して同種に呼びかけるのに対して、ヒトの名前は名指しされた個体が…
ストーンヘンジ(Stonehenge)の祭壇石の産地に関する研究(Clarke et al., 2024)が公表されました。ストーンヘンジはイングランドのウィルトシャーのソールズベリー平原に位置する、イギリスにおける最大級の後期新石器時代~青銅器時代にかけての墓地遺跡で、世界的に有名な観光地にもなっています。ストーンヘンジに関しては、…
氷河の後退で出現した陸上生態系の発達に関する研究(Ficetola et al., 2024)が公表されました。氷河の全球的な後退は山岳および高緯度地域の景観を劇的に変化させつつあり、一見不毛な土地から新たな生態系が発達しています。こうした新たに出現した生態系に関する研究は、気候変動が微小生息地や生物群集とどのように相互作用し、氷の消…
現代人の遺伝子発現の差異に関する研究(Taylor et al., 2024)が公表されました。遺伝子発現やスプライシングに影響を及ぼす遺伝的多様性は、表現型の多様性の重要な要因です。これらの結びつきをヒトにおいて調べる研究はひじょうに貴重ですが、参加者がヨーロッパ系に大きく偏っているため、これが一般化の制約となり、進化研究を妨げてい…
初期の四肢類の地理的分布に関する研究(Marsicano et al., 2024)が公表されました。四肢類の初期進化に関する現在の仮説では、石炭紀の古赤道の石炭を生成した、広範な湿地との密接な生態学的および生物地理的関係を前提としており、太古の四肢類群は後期石炭紀(約3億700万年前)に現代の羊膜類および平滑両生類の近縁動物によって…
アメリカ合衆国の退役軍人の大規模なゲノムデータを報告した研究(Verma et al., 2024)が公表されました。日本語の解説記事もあります。GWAS(genome-wide association studies、ゲノム規模関連研究)から得られた調査結果は、疾患の遺伝学的基礎の基本的知識を提供し、予防と治療のための精密な手法を促…
新石器時代スカンジナビア半島の社会構造とペスト感染に関する研究(Seersholm et al., 2024)が公表されました。本論文は、新石器時代スカンジナビア半島の108個体のゲノムデータを報告するとともに、この集団は約120年間に少なくとも3回、異なるペスト感染を経た、と示しました。こうした繰り返しのペスト感染が、ヨーロッパ新石…
中世シチリア島の人類集団の学際的分析結果を報告した研究(Monnereau et al., 2024)が公表されました。本論文は、中世シチリア島西部に位置するセジェスタ(Segesta)遺跡のキリスト教徒とイスラム教徒の中世の墓地被葬者の、放射性炭素年代測定結果とゲノムデータと同位体データを報告しています。この学際的分析により明らかに…