チチェン・イッツァの被葬者のゲノムデータ

 マヤ文化の有名な都市であるチチェン・イッツァ(Chichén Itzá)の被葬者のゲノムデータを報告した研究(Barquera et al., 2024)が報道されました。チチェン・イッツァはメキシコのユカタン半島に位置し、マヤ文化の古典期後期および末期(600~1000年頃)における最大級の都市とされています。本論文は、チチェン・イ…
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岩明均『ヒストリエ』第12巻発売(講談社)

 待望の第12巻が刊行されました。実に4年11ヶ月振りの新刊となります。もうかなり前に本作の完結は諦めましたが、正直なところ、第12巻の刊行も厳しいかな、と思っていただけに、嬉しいものです。第11巻は、オリュンピアスが夫のフィリッポス2世から故郷のモロッシアで休むよう勧告され、その道中でフィリッポス2世が派遣した暗殺部隊に襲撃され、オリ…
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ヒト脳の進化と速度

 ヒト脳の進化と速度に関する研究(Lindhout et al., 2024)が公表されました。現生人類(Homo sapiens)の脳の進化には分子と細胞の独特な特殊化が伴っていましたが、こうした特殊化は、さまざまな認知能力を支えるだけではなく、神経疾患への脆弱性を高めてもいます。こうした特徴には、ヒトに特異的なものもあれば、類縁種と…
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ヨーロッパの初期現生人類の形態

 ヨーロッパの初期現生人類(Homo sapiens)の形態について、今年(2024年)3月20日~23日にかけてアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス市で開催された第93回アメリカ生物学会(旧称はアメリカ自然人類学会)総会で報告されました(Bejdova et al., 2024)。この報告の要約はPDFファイルで読めます(P15…
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言語の機能

 言語の機能に関する研究(Fedorenko et al., 2024)が公表されました。言語はヒトを定義づける特徴ですが、言語が果たす機能(あるいは複数の機能)については何世紀にもわたり議論が続いています。本論文は、神経科学と関連分野から得られた最近の証拠を提示し、ヒトは言語を思考のために使うという有力な考えに反して、現生人類(Hom…
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大河ドラマ『光る君へ』第25回「決意」

 今回は、藤原宣孝から求婚された紫式部(まひろ)が、父である藤原為時の勧めで越前から都に戻り、再び都での話が中心となりました。都に戻っても宣孝の妻となる決断をすぐにはできなかった紫式部が、最終的に宣孝の妻となることを受け入れたのは、紫式部の「忘れえぬ人」が、為時の抜擢などから藤原道長(三郎)だと気づいた宣孝の工作の結果とも言えるように思…
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ネアンデルタール人の炉床の年代測定

 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の炉床の新たな年代測定方法を報告した研究(Herrejón-Lagunilla et al., 2024)が公表されました。旧石器時代のヒトの活動の期間を明らかにすることは、先史考古学的における屈指の難題です。これは、年代測定技術の分解能に限界があるためで、放射性炭素年代…
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後期新石器時代ヨーロッパ人類集団における遺伝的構成の大きな変容

 後期新石器時代ヨーロッパ人類集団における遺伝的構成の大きな変容を報告した研究(Parasayan et al., 2024)が公表されました。後期新石器時代のヨーロッパにおいては、ポントス・カスピ海草原(ユーラシア中央部西北からヨーロッパ東部南方までの草原地帯)を中心にヨーロッパ草原地帯からの大規模な人口移動により、人類集団の遺伝的構…
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齋藤慈子・平石界・久世濃子編集『正解は一つじゃない 子育てする動物たち』

 東京大学出版会より2019年11月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書はヒトやその近縁のチンパンジーおよびゴリラからトゲウオまで、さまざまな動物の子育てを進化的観点から取り上げています。ヒトも動物の一種である以上、その子育ては進化的過程を経ているので、進化的観点での考察が重要になってくるとは思います。ただ、本書冒頭で指摘されて…
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『卑弥呼』第132話「告白 其の二」

 『ビッグコミックオリジナル』2024年7月5日号掲載分の感想です。前回は、馬韓の蘇塗(ソト)の邑で、馬韓の湖南(コナム)国の王が派遣した兵隊を、倭人であるゴリとその配下の兵士が撃退し、ヤノハがゴリに、その顔の黥はトンカラリンの洞窟の地図で、ゴリこそ、暈(クマ)国のタケル王と大夫である鞠智彦(ククチヒコ)がトンカラリンの洞窟内の地図を作…
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左利きと関連する遺伝的多様体

 左利きと関連する遺伝的多様体についての研究(Schijven et al., 2024)が公表されました。左利きのヒトは全体の約10%で、すでにホモ・ハビリス(Homo habilis)において右利きの個体が確認されており(関連記事)、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)においても右利きが圧倒的に多かっただ…
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チンパンジーの社会的学習

 チンパンジーの社会的学習に関する研究(Leeuwen et al., 2024)が公表されました。文化の累積的進化は、現生人類(Homo sapiens)の生物学的成功に重要なヒトに特有の現象と主張されてきました。累積的な文化進化出現の一つの妥当な条件は、社会的学習を使用して、自身では容易に確信できない方法を獲得する個体の能力です。チ…
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類人猿の性染色体の完全な配列

 類人猿の性染色体の完全な配列を報告した研究(Makova et al., 2024)が公表されました。当ブログでは、以前にはヒトも類人猿に含めており、非ヒト類人猿という用語も使いましたが、最近では、その語源から類人猿にヒトを含めるのは妥当ではない、と考えるようになりました。類人猿を単系統群(クレード)と定義せねばならない合理的な理由は…
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大河ドラマ『光る君へ』第24回「忘れえぬ人」

 前回、紫式部(まひろ)が越前で藤原宣孝から求婚され、周明とも親しくなり、もちろん藤原道長(三郎)は紫式部にとって今でも忘れられない人なわけで、宣孝からの求婚にどう対応するのか、注目していました。紫式部は即答せず、周明との決別に近い関係の変化や、友人の死亡などもあり、宣孝の妻となる決意をします。紫式部と宣孝の間には娘(賢子)が生まれ、今…
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青銅器時代ユーラシア北部の人口史と文化との関連

 古代ゲノムデータに基づく青銅器時代ユーラシア北部の人口史と文化との関連を検証した研究(Childebayeva et al., 2024)が公表されました。本論文は、とくにロシアのオムスク州のロストフカ(Rostovka、略してROT)遺跡とムルマンスク州のコラ(Kola)にあるボリショイ・オレニー・オストロフ(Bolshoy Ole…
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楊海英『世界を不幸にする植民地主義国家・中国』

 2020年12月に徳間書店より刊行されました。電子書籍での購入です。本書は中国の独特なナショナリズムを「中国流官制ナショナリズム」と呼び、それが中国に支配されている地域や日本も含めてその近隣諸国にとって問題のある概念であるとともに、脅威となっていることを指摘します。本書が対象としている主要な(というかほぼ全ての)読者は日本人でしょうか…
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エジプトの東部砂漠の前期石器時代と中期石器時代

 エジプトの東部砂漠の前期石器時代と中期石器時代の石器を報告した研究(Leplongeon et al., 2024)が公表されました。エジプトについては、古王国以降の歴史がよく知られているでしょうが、現生人類(Homo sapiens)だけではなく他の人類のアフリカからの拡散経路においても、重要な役割を果たしたと考えられます。エジプト…
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オーストラリアの人類史

 オーストラリアの人類史に関する概説(Gross., 2024)が公表されました。本論文はオーストラリアの初期人類史の概説で、おもに現生人類(Homo sapiens)のオーストラリアへの初期拡散に焦点を当てていますが、更新世の寒冷期には現在のオーストラリア大陸とニューギニア島とタスマニア島は陸続きで、サフルランドを構成していました。ま…
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雄マウスの仔育てに影響を及ぼすかもしれない副腎細胞の進化

 副腎細胞の進化による雄マウスの仔育てへの影響についての研究(Niepoth et al., 2024)が公表されました。特殊化した機能を持つ細胞の種類は動物の行動を根本的に調節しますが、新たな種類の細胞の出現や、それらが行動に及ぼす影響の根底にある遺伝学的機構はよく分かっていません。本論文は、両親が仔の世話をする一夫一妻(単婚、一雄一…
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イランの更新世の石器

 イランの更新世の石器を報告した研究(Hashemi et al., 2024)が公表されました。本論文は、イラン中央砂漠北部(the northern part of the Iranian Central Desert、略してNICD)に位置するセムナーン(Semnan)州のエイヴァーネケイ(Eyvanekey)遺跡の、少なくとも中…
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大河ドラマ『光る君へ』第23回「雪の舞うころ」

 今回も越前編となり、宋の見習い医師とされていた周明が、前回終盤で流暢な日本語を話したことで、その出自に注目していましたが、対馬生まれで、父親から海に捨てられたところを宋の舟に拾われ、奴隷のような扱いを受けたので、逃げだして医師の弟子になった、と周明は紫式部(まひろ)に打ち明けました。紫式部は周明から宋の言葉を学び、周明を通じて紫式部の…
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『地球ドラマチック』「ネアンデルタール人vs.ホモ・サピエンス」

 NHK教育テレビで放送されたので、視聴しました。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)とを近年までの研究に基づいて比較し、ネアンデルタール人の絶滅理由を検証しており、フランスで2023年に放送された番組の日本語版のようです。『地球ドラマチック』では2021年に、「ネアンデ…
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原田信男『日本の食はどう変わってきたか 神の食事から魚肉ソーセージまで』

 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2013年4月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は食文化の変遷から見た日本史で、食文化の変遷を歴史的背景に位置づけています。本書がまず指摘するのは、アジア東部および南東部の稲作文化圏とは異なり、日本では古代において国家が肉食を禁じたことで、ブタの飼育が沖縄など一部を除いて行なわれなくなっ…
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日本列島の人類集団における農耕前後の適応の比較

 日本列島の人類集団における農耕前後の適応の比較を検証した研究(Cooke et al., 2024)が公表されました。本論文は、日本列島における本格的な農耕の前後の人類集団の適応の違いを、遺伝的多様体の頻度の比較から検証しています。具体的には、エクトジスプラシンA受容体(ectodysplasin A receptor、略してEDAR…
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『卑弥呼』第131話「告白 其の一」

 『ビッグコミックオリジナル』2024年6月20日号掲載分の感想です。前回は、馬韓の蘇塗(ソト)の邑で、馬韓の湖南(コナム)国の王が派遣した兵隊に、ゴリと名乗る大柄な倭人が弓を向け、それをヤノハが背後から見守っているところで終了しました。今回は、その場面の続きから始まります。ゴリは湖南国の兵隊に朝鮮語で、王といえども立ち入り禁止のはず、…
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『卑弥呼』第16集発売

 待望の第16集が発売されました。第16集には、 口伝119「有りや、無しや」 https://sicambre.seesaa.net/article/202311article_22.html 口伝120「秘薬」 https://sicambre.seesaa.net/article/202312article_6.h…
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アジア南西部の旧石器時代

 おもに古代ゲノム研究に基づくアジア南西部の旧石器時代の概説(Miedzianogora., 2024)が公表されました。アジア南西部はアフリカからの現生人類(Homo sapiens)の拡散においてたいへん重要な地域で、最近もイラン高原に注目した研究が刊行されました(Vallini et al., 2024)。本論文は、アフリカからの…
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大河ドラマ『光る君へ』第22回「越前の出会い」

 今回から本格的に越前編となります。主人公の紫式部(まひろ)の越前での見聞が主題となり、一方で藤原道長(三郎)が準主人公というべき重要人物であるため、都での様子も描くことができます。大河ドラマでは、2008年放送の『篤姫』などで採用されてきた構成で、上手くいけば無理なく複数の局面を描けますが、本作では今のところ、『篤姫』と同じくこの構成…
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バオバブの進化史

 バオバブの進化史に関する研究(Wan et al., 2024)が公表されました。バオバブの木(アダンソニア属の高木類)は、その印象的な形状と、動物相との独特な関係性から、きわめて大きな注目を集めてきました。目を見張るようなこれらの木々はまた、人類の文化にも影響を及ぼし、無数の芸術や伝説、伝統に着想を与えてきており、アフリカの象徴的な…
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長谷川政美『進化生物学者、身近な生きものの起源をたどる』

 ベレ出版より2023年12月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、イヌやネコから昆虫や植物まで、身近な生物の起源を解説しており、以下、とくに興味深い見解を備忘録として取り上げます。身近な生物の代表格とも言えるイヌについては、近年の研究(関連記事)を踏まえて、アジア東部起源と推測されています。イヌはアジア東部にいたハイイロオオ…
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