頻繁な撹乱による過去の人類集団の復元力強化を示した研究(Riris et al., 2024)が公表されました。過去の人類の適応の記録は、未来の危機への対応を導く上で重要な教訓をもたらします。これまで、人類が時間とともに撹乱を吸収してそこから回復する能力について、体系的・全球的に比較されたことはなかった。レジリエンス(復元力)とは、危…
科の水準でのゲノム解析から鳥類の進化の複雑を示した研究(Stiller et al., 2024)が公表されました。鳥類の主要な系統間の関係については、過去数十年にわたる多大な努力にも関わらず、明確な解決策がないまま、依然として激しい議論が続いています。こうした見解の相違は、標本種の多様性、系統発生学的な方法、ゲノム領域の選択に起因す…
チベット高原西部の人類集団の古代ゲノムデータを報告した研究(Bai et al., 2024)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。チベット高原は、現生人類(Homo sapiens)のみならず、種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)の存在も確認されており、その独特な人類進化史で注目されてい…
父系微生物叢の乱れによる仔の適応度への影響に関する研究(Argaw-Denboba et al., 2024)が公表されました。腸内微生物叢は、宿主と環境が相互作用する境界面で作用し、ヒトの恒常性や代謝網に影響を及ぼします。したがって、腸内の微生物生態系の均衡を乱す環境因子は、体細胞組織全体にわたる生理学的応答および疾患関連応答を形作…
アフリカ北部の農耕開始前の狩猟採集民における植物性食料への高い依存を報告した研究(Moubtahij et al., 2024)が公表されました。本論文は、亜鉛(Zn)やストロンチウム(Sr)や炭素(C)や窒素(N)や硫黄(S)の同位体を用いて、農耕開始の数千年前となるアフリカ北部の後期石器時代の狩猟採集民の食性が、植物性食料に強く依…
頭蓋形態の比較に基づいて過去50万年間のホモ属の進化を検証した研究(Neves et al., 2024)が公表されました。本論文は、21世紀における新たな更新世ホモ属化石の発見や、分子生物学の飛躍的な発展を踏まえて、保存状態良好な過去50万年間のヨーロッパとアフリカとアジアで発見された86点のホモ属化石を比較し、現生人類の起源につい…
文化により異なる動機づけ効果を報告した研究(Medvedev et al., 2024)が公表されました。金銭は、努力を要する行動の主要な動機づけ要因と考えられることが多く、金銭や金銭以外の報酬の有効性を理解することには、現実的な意味合いがあります。努力行為の動機づけは、雇用主と政府と非営利団体が世界的に直面する問題です。しかし、動機…
更新世にさかのぼるオーストラリアにおける人為的な火の制御を報告した研究(Bird et al., 2024)が公表されました。オーストラリア大陸にヨーロッパ人が到来した時点で、洗練された先住民社会はオーストラリアの広範な熱帯サバンナ全域で土地の管理を行なっていました。オーストラリアの先住民共同体において火は長い間、景観を社会に有益な形…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、古代中東における暴力の傾向に関する研究(Baten et al., 2023)が公表されました。初期のヒト社会において、個人間の暴力(暴行、殺人、奴隷、拷問、独裁、残酷な刑罰、暴力的抗争など)はどのように発展したのでしょうか?殺人の記録が最近のものでしか利用できないことを考えると、ヒトの歴史の大半は…
交感神経系の起源に関する研究(Edens et al., 2024)が公表されました。神経冠は脊椎動物に固有の胚性幹細胞集団で、脊椎動物の進化は、その拡大と多様化により、新たな細胞の種類と顎や末梢神経節などの新規構造の出現が可能になったことで促進された、と考えられています。無顎脊椎動物にも感覚神経節はありますが、体幹の交感神経鎖につい…
アヴァール人の社会的慣行を分析した学際的研究(Gnecchi-Ruscone et al., 2024)が公表されました。本論文は、6~9世紀にヨーロッパ中央部東方に存在したアヴァール人の社会的慣行を、遺伝学(古代ゲノム解析)と考古学と人類学と歴史学と組み合わせて分析しています。その結果、9世代にまたがり、約300個体から構成される大…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、古代の染色体異常を報告した研究(Rohrlach et al., 2024)が公表されました。異数性、とくにトリソミーは現在、ヒト遺伝学で観察される最も一般的な遺伝子異常を表しています。染色体トリソミーを有する人は、細胞内に特定の染色体が2本ではなく3本あります。21番染色体のトリソミーはダウン症候…
ヒトのセントロメアの多様性と進化に関する研究(Logsdon et al., 2024)が公表されました。ヒトのセントロメアは、その反復性と規模の大きさから、これまで塩基配列の解読やアセンブリがひじょうに困難でした。そのため、セントロメアは最も急速に変異が起こる領域の一つであるにも関わらず、ヒトのセントロメアの多様性パターンや、進化お…
ヨーロッパ最古級の石器を報告した研究(Garba et al., 2024)が公表されました。人類がユーラシアに到達したのは200万~100万年前頃と考えられてきましたが、近年ではヨルダンにおいて248万年前頃(関連記事)、中国において212万年前頃(関連記事)までさかのぼるかもしれない石器が発見されています。ただ、そうした痕跡はまだ…
現生人類(Homo sapiens)のアフリカからの拡散時の気候に関する研究(Kappelman et al., 2024)が公表されました。現生人類は10万年前頃までに何度もアフリカから拡散していましたが、非アフリカ系現代人の主要な祖先となる現生人類集団がアフリカから拡散したのは10万年前頃以降です(関連記事)。ほとんどのモデルでは…
片親起源効果(parent-of-origin effect)を進化させた機構に関する研究(Pliota et al., 2024)が公表されました。ゲノムインプリンティングは、母親由来ゲノムと父親由来ゲノムが同等でなくなる現象で、多くの植物種および哺乳類種において独立に進化してきた重要な過程です。親族理論によれば、インプリンティング…
古代ゲノムデータに基づいてキプロス島の初期人類の起源を推測した研究(Heraclides et al., 2024)が公表されました。本論文は、キプロス島の初期完新世の3個体のゲノムデータを、アナトリア半島やレヴァントなど近隣地域の後期更新世から初期完新世の人類のゲノムデータと比較しました。その結果、キプロス島の初期完新世の3個体のゲ…