鳥類の進化の複雑さ

 科の水準でのゲノム解析から鳥類の進化の複雑を示した研究(Stiller et al., 2024)が公表されました。鳥類の主要な系統間の関係については、過去数十年にわたる多大な努力にも関わらず、明確な解決策がないまま、依然として激しい議論が続いています。こうした見解の相違は、標本種の多様性、系統発生学的な方法、ゲノム領域の選択に起因す…
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牛乳摂取量と2型糖尿病との関連

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、牛乳摂取量と2型糖尿病(type 2 diabetes、略してT2D)との関連についての研究(Luo et al., 2024)が公表されました。牛乳はヒトの食性に含まれることが多いものの、牛乳摂取量と2型糖尿病との間の関係には依然として議論の余地があります。ラクターゼ(Lactase、略してLCT…
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大河ドラマ『光る君へ』第21回「旅立ち」

 今回は、長徳の変の結末とともに、父親の藤原為時が越前守に任じられたことに伴い、紫式部(まひろ)も都を離れて越前に赴いたところまで描かれました。この後、紫式部は藤原宣孝と結婚し、娘が生まれ、夫との死別後?に『源氏物語』の執筆を始めたようで、この越前行きは紫式部にとって転機と言えそうです。本作でも、紫式部の越前での経験はかなり丁寧に描かれ…
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大相撲夏場所千秋楽

 先場所新入幕で優勝した尊富士関と、三役に復帰した朝乃山関の休場は残念でしたが、1横綱4大関全員が出場してきました。しかし、初日に1横綱4大関全員が敗れる大波乱となり、あまりにも相撲内容の悪かった横綱の照ノ富士関は2日目から休場となりました。稀勢の里関の悪例があるので、横綱の休場にはできるだけ寛容であるべきと考えていますが、さすがに照ノ…
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チベット高原西部の人口史

 チベット高原西部の人類集団の古代ゲノムデータを報告した研究(Bai et al., 2024)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。チベット高原は、現生人類(Homo sapiens)のみならず、種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)の存在も確認されており、その独特な人類進化史で注目されてい…
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寺西貞弘『道鏡 悪僧と呼ばれた男の真実』

 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2024年4月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書冒頭で述べられているように、道鏡は戦前には平将門および足利尊氏(高氏)とともに「天下の三大悪人」と称されていました。戦後、平将門と足利尊氏は、大河ドラマの主人公となったように、通俗的な印象は戦前よりかなりよくなっているでしょうが、道鏡の通俗的…
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仔の適応度に影響を与える父系微生物叢の乱れ

 父系微生物叢の乱れによる仔の適応度への影響に関する研究(Argaw-Denboba et al., 2024)が公表されました。腸内微生物叢は、宿主と環境が相互作用する境界面で作用し、ヒトの恒常性や代謝網に影響を及ぼします。したがって、腸内の微生物生態系の均衡を乱す環境因子は、体細胞組織全体にわたる生理学的応答および疾患関連応答を形作…
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アフリカ北部の農耕開始前の狩猟採集民における植物性食料への高い依存

 アフリカ北部の農耕開始前の狩猟採集民における植物性食料への高い依存を報告した研究(Moubtahij et al., 2024)が公表されました。本論文は、亜鉛(Zn)やストロンチウム(Sr)や炭素(C)や窒素(N)や硫黄(S)の同位体を用いて、農耕開始の数千年前となるアフリカ北部の後期石器時代の狩猟採集民の食性が、植物性食料に強く依…
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頭蓋形態の比較に基づく過去50万年間のホモ属の進化

 頭蓋形態の比較に基づいて過去50万年間のホモ属の進化を検証した研究(Neves et al., 2024)が公表されました。本論文は、21世紀における新たな更新世ホモ属化石の発見や、分子生物学の飛躍的な発展を踏まえて、保存状態良好な過去50万年間のヨーロッパとアフリカとアジアで発見された86点のホモ属化石を比較し、現生人類の起源につい…
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『卑弥呼』第130話「駆け引き」

 『ビッグコミックオリジナル』2024年6月5日号掲載分の感想です。前号は休載だったので、この間が長く感じました。前回は、馬韓の蘇塗(ソト)の邑で、ヤノハがゴリと名乗る倭人から、浮屠(ブット)の教え、つまり仏教の教義を聞いたところで終了しました。今回は、ヤノハがヌカデに自分の想いを語る場面の回想から始まります。最初、自分を守るためだけに…
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大河ドラマ『光る君へ』第20回「望みの先に」

 今回は、前回から引き続き長徳の変が描かれました。藤原道長(三郎)にとって甥であり、政敵でもある藤原伊周と藤原隆家の兄弟はこれで失脚し、道長の権力基盤はより強固になるわけですが、道長はこの機に伊周と隆家に徹底的な打撃を与えるのではなく、伊周と隆家の呪詛の疑惑(当初、仕込んだのは藤原詮子と思いましたが、源倫子の可能性も考え、結局、口の軽い…
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文化により異なる動機づけ効果

 文化により異なる動機づけ効果を報告した研究(Medvedev et al., 2024)が公表されました。金銭は、努力を要する行動の主要な動機づけ要因と考えられることが多く、金銭や金銭以外の報酬の有効性を理解することには、現実的な意味合いがあります。努力行為の動機づけは、雇用主と政府と非営利団体が世界的に直面する問題です。しかし、動機…
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宮嵜麻子『ローマ帝国の誕生』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2024年2月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書はローマが帝国となっていく過程を検証し、おもにローマが大国化していく紀元前3世紀末からアウグストゥスの頃までを対象としていますが、それ以前の地中海地域の一都市国家だった時代も取り上げられています。確かに、ローマ帝国の成立において、規模や勢力…
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更新世にさかのぼるオーストラリアにおける人為的な火の制御

 更新世にさかのぼるオーストラリアにおける人為的な火の制御を報告した研究(Bird et al., 2024)が公表されました。オーストラリア大陸にヨーロッパ人が到来した時点で、洗練された先住民社会はオーストラリアの広範な熱帯サバンナ全域で土地の管理を行なっていました。オーストラリアの先住民共同体において火は長い間、景観を社会に有益な形…
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古代中東における暴力の傾向

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、古代中東における暴力の傾向に関する研究(Baten et al., 2023)が公表されました。初期のヒト社会において、個人間の暴力(暴行、殺人、奴隷、拷問、独裁、残酷な刑罰、暴力的抗争など)はどのように発展したのでしょうか?殺人の記録が最近のものでしか利用できないことを考えると、ヒトの歴史の大半は…
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ドイツの初期現生人類の環境と生活

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、ドイツで発見された初期現生人類(Homo sapiens)の環境と生活に関する二つの研究が公表されました。この二つの研究は、ドイツのテューリンゲン州(Thuringia)のオーラ川(Orla River)流域に位置するラニス(Ranis)のイルゼン洞窟(Ilsenhöhle)で発見された、中部旧石器…
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大河ドラマ『光る君へ』第19回「放たれた矢」

 今回は、内覧に任じられた藤原道長(三郎)と、関白を望んで叶わなかった藤原伊周との政争と、それをめぐる周囲の思惑が中心に描かれました。伊周は父親の道隆により経験に見合わないほど高い地位に引き立てられ、道隆の強引な入内工作もあり、本作では中関白家全体が貴族層で広く反感を買っているように思います。伊周の妹で一条天皇の中宮である定子はそれをよ…
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脊椎動物の黎明期の神経冠に起源がある交感神経系

 交感神経系の起源に関する研究(Edens et al., 2024)が公表されました。神経冠は脊椎動物に固有の胚性幹細胞集団で、脊椎動物の進化は、その拡大と多様化により、新たな細胞の種類と顎や末梢神経節などの新規構造の出現が可能になったことで促進された、と考えられています。無顎脊椎動物にも感覚神経節はありますが、体幹の交感神経鎖につい…
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アヴァール人の社会的慣行

 アヴァール人の社会的慣行を分析した学際的研究(Gnecchi-Ruscone et al., 2024)が公表されました。本論文は、6~9世紀にヨーロッパ中央部東方に存在したアヴァール人の社会的慣行を、遺伝学(古代ゲノム解析)と考古学と人類学と歴史学と組み合わせて分析しています。その結果、9世代にまたがり、約300個体から構成される大…
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篠川賢『国造 大和政権と地方豪族』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2021年11月に刊行されました。電子書籍での購入です。国造の設置は、記紀によると成務「天皇」の時に始まりました。ただ、成務天皇の実在性には疑問が呈されており、本書も成務天皇の国風諡号が7世紀風(タラシヒコ)であることから、その実在性には否定的で、あくまでも記紀の歴史認識だと指摘しています。本書は…
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古代の染色体異常

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、古代の染色体異常を報告した研究(Rohrlach et al., 2024)が公表されました。異数性、とくにトリソミーは現在、ヒト遺伝学で観察される最も一般的な遺伝子異常を表しています。染色体トリソミーを有する人は、細胞内に特定の染色体が2本ではなく3本あります。21番染色体のトリソミーはダウン症候…
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ヒトのセントロメアの多様性と進化

 ヒトのセントロメアの多様性と進化に関する研究(Logsdon et al., 2024)が公表されました。ヒトのセントロメアは、その反復性と規模の大きさから、これまで塩基配列の解読やアセンブリがひじょうに困難でした。そのため、セントロメアは最も急速に変異が起こる領域の一つであるにも関わらず、ヒトのセントロメアの多様性パターンや、進化お…
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アジア東部および南東部への人類の拡散

 アジア東部および南東部への人類の拡散に関する概説(Sawafuji et al., 2024)が公表されました。本論文は、化石(形態学的)証拠と分子生物学的証拠を統合し、現生人類(Homo sapiens)に限らず、ホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis)やホモ・ルゾネンシス(Homo luzonensis)やホモ…
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ヨーロッパ最古級の石器

 ヨーロッパ最古級の石器を報告した研究(Garba et al., 2024)が公表されました。人類がユーラシアに到達したのは200万~100万年前頃と考えられてきましたが、近年ではヨルダンにおいて248万年前頃(関連記事)、中国において212万年前頃(関連記事)までさかのぼるかもしれない石器が発見されています。ただ、そうした痕跡はまだ…
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大河ドラマ『光る君へ』第18回「岐路」

 前回から、藤原道長(三郎)にとって大きな転機となった995年(以下、西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)の政局が描かれており、道長は本作の準主人公とも言える重要人物だけに、この過程は丁寧に描かれています。995年には、前回描かれたように、4月に関白で道長の兄である道隆が死亡し、道隆は息子の伊周に関白を継承させるべく、一条天…
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現生人類のアフリカからの拡散時の気候

 現生人類(Homo sapiens)のアフリカからの拡散時の気候に関する研究(Kappelman et al., 2024)が公表されました。現生人類は10万年前頃までに何度もアフリカから拡散していましたが、非アフリカ系現代人の主要な祖先となる現生人類集団がアフリカから拡散したのは10万年前頃以降です(関連記事)。ほとんどのモデルでは…
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金子拓『長篠合戦 鉄砲戦の虚像と実像』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2023年12月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、長篠合戦の「実像」だけではなく、通俗的な長篠合戦像の形成過程も検証しており、新書であることを意識してか、一般向けに分かりやすい構成になっているように思います。近代以降の長篠合戦像の基礎となったのは参謀本部編纂の『日本戦史』で、その認識…
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片親起源効果の根底にある利己的な対立

 片親起源効果(parent-of-origin effect)を進化させた機構に関する研究(Pliota et al., 2024)が公表されました。ゲノムインプリンティングは、母親由来ゲノムと父親由来ゲノムが同等でなくなる現象で、多くの植物種および哺乳類種において独立に進化してきた重要な過程です。親族理論によれば、インプリンティング…
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キプロス島の初期人類の起源

 古代ゲノムデータに基づいてキプロス島の初期人類の起源を推測した研究(Heraclides et al., 2024)が公表されました。本論文は、キプロス島の初期完新世の3個体のゲノムデータを、アナトリア半島やレヴァントなど近隣地域の後期更新世から初期完新世の人類のゲノムデータと比較しました。その結果、キプロス島の初期完新世の3個体のゲ…
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古人類学の記事のまとめ(52)2024年1月~2024年4月

 2024年1月~2024年4月のこのブログの古人類学関連の記事を以下に整理しておきます。なお、過去のまとめについては、2024年1月~2024年4月の古人類学関連の記事の後に一括して記載します。とくに重要と判断した研究については、冒頭に★をつけています。私以外の人には役立たないまとめでしょうが、当ブログは不特定多数の読者がいるという前…
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