ドクチョウ属(Heliconius)の同所的な雑種種分化に関する研究(Rosser et al., 2024)が報道されました。雑種形成は、複数の系統間での適応の共有を許容し、新たな種の進化を引き起こす可能性があります。しかし、同倍数体雑種種分化の説得力のある例はいまだに稀で、これは、生殖隔離を生じさせるのに雑種形成が不可欠であること…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、喫煙開始年齢と脳容量の関係についての研究(Xiang et al., 2023)が公表されました。青年期におけるタバコの喫煙は差し迫った公衆衛生上の問題です。喫煙は世界的に成人の死亡原因の第1位で、全世界の喫煙に関連した死者数は2030年の時点で年間800万人に達する、と予測されています。これまでの…
中国で発見されたジュラ紀の新種の化石哺乳類を報告した研究(Mao et al., 2024)が公表されました。シュオテリウム類は、下顎臼歯において偽タロニッドがトリゴニッドの前方にある偽トリボスフェニック型の歯を有するジュラ紀の哺乳型類(mammaliaform)で、この特徴は、タロニッドがトリゴニッドの後方にあるトリボスフェニック型…
野生の雌のブチハイエナ(Crocuta crocuta)における社会的地位のエピジェネティックな痕跡に関する研究(Vullioud et al., 2024)が公表されました。哺乳類社会では、社会的地位が健康と繁殖実績と生存につながります。ハイエナは、地位の高い雌による地位の低い雌の支配によって強制される社会的階層を形成しており、これ…
カカオ(Theobroma cacao)の栽培化の拡大に関する研究(Lanaud et al., 2024)が公表されました。ヒトには植物の輸送と交易の長い歴史があり(関連記事)、栽培化された植物の進化に寄与してきました。カカオは南アメリカ大陸の新熱帯区に起源があり、その現生系統は世界で最も重要な作物の一つで、その果実の中の種子(カカ…
頂点捕食者の減少による中位捕食への遺伝的影響に関する研究(Beer et al., 2024)が公表されました。頂点捕食者の減少は世界的に広がっており、食物網の動態における変化を通じて、競争の鈍化による生態系内の下位の中域的な捕食者(中間捕食者)の活動性の強化を可能にするなど、生態系群に劇的な影響を及ぼすことがよくありますが、その進化…
ヒョウの古代ミトコンドリアDNA(mtDNA)を報告した研究(Zhang et al., 2024)が公表されました。近年の古代DNA研究の進展は目覚ましく、やはりヒトを対象にした研究がとくに盛んですが、非ヒト動物の古代DNAデータも多数報告されるようになっています。本論文は、古代mtDNAデータからヒョウ(Panthera pard…
キンカチョウ(Taeniopygia guttata)の求愛歌に関する研究(Alam et al., 2024)が公表されました。鳴禽類における発声の学習は、雌の選好性が雄に多種多様な囀りのレパートリーを発達させる性選択によって進化した、と考えられています。しかし、鳴禽類には、一生の間に1種類の囀りしか学ばない種も多くいます(約1/3…
北アメリカ大陸先住民のブラックフット連合(Blackfoot Confederacy)のゲノムデータを報告した研究(Rider et al., 2024)が公表されました。本論文は、ブラックフット連合の近現代のゲノムデータから、アメリカ大陸先住民におけるこれまで報告されていなかった古代の遺伝的系統を推測し、アメリカ大陸への人類の移住史…
ハクジラ類(シャチ、シロイルカ、イッカクなど)の閉経の進化に関する研究(Ellis et al., 2024)が公表されました。ひじょうに稀な減少である閉経が進化した経緯や理由を明らかにすることは、さまざまな分野で長年にわたる課題となっています。雌は一般に、成体期の全体にわたり生殖を行なうことで、繁殖成功を最大化させることができます。…
ヌタウナギのゲノムと脊椎動物の進化に関する研究(Marlétaz et al., 2024)が公表されました。ヌタウナギ類とヤツメウナギ類は、現存する唯一の無顎類系統として、脊椎動物の初期進化を探るためのきわめて重要な手がかりを提供します。本論文は、クロヌタウナギ(Eptatretus atami)の染色体規模のゲノム塩基配列を用いて…