佐藤信編『古代史講義【海外交流篇】』

 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2023年9月に刊行されました。電子書籍での購入です。古代日本史でも南朝や隋や唐や朝鮮半島との関係にはもう四半世紀以上関心を抱いてきましたが、近年では優先順位が20年前ほどには高くなく、勉強が停滞しているので、最新の知見を得るために読みました。この問題については、現在最も優先順位が高い古代ゲノム研究…
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アフリカの過去の気候データから示唆されるさらなる乾燥化

 アフリカの過去の気候データからさらなる乾燥化を示唆した研究(Baxter et al., 2023)が公表されました。人為起源の気候変動は、全球の水循環、とくにモンスーンの降雨に依存する農業が経済の基盤となっている熱帯地域に、深刻な影響を及ぼすと予測されています。アフリカ大陸の最東端に位置する「アフリカの角」では、温度の上昇とともに降…
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最古となるコムギのゲノムデータ

 最古となるコムギのゲノムデータを報告した研究(Ahmed et al., 2023)が公表されました。ヒトツブコムギ(Triticum monococcum)は、最初に農耕が行なわれるようになったとされる近東の肥沃な三日月地帯で初めて栽培化されたコムギ種で、新石器時代革命の中心的な栽培種でした。野生ヒトツブコムギは、レヴァントにおいて…
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アフリカ南西部の現代人から推測されるアフリカ大陸の現代人の深い遺伝的構造

 アフリカ南西部の現代人のゲノム解析からアフリカ大陸の現代人の深い遺伝的構造を明らかにした研究(Oliveira et al., 2023)が公表されました。アフリカは現代人の遺伝的多様性が最も高い地域ですが、ヨーロッパなどと比較して現代人のゲノム研究が遅れているため、現代人の遺伝的多様性の把握が妨げられています。本論文は遺伝学的にこれ…
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大河ドラマ『どうする家康』第36回「於愛日記」

 今回は於愛の退場が描かれました。於愛はこれまで何度か見せ場があったものの、全体的にはさほど目立っていませんでしたが、今回は於愛の心情が掘り下げられました。それと関連して本作の特徴である過去の突然な描写が今回もあり、於愛が夫を失い、ひどく落ち込んでいるのに無理に明るく鷹揚に振舞っていて、瀬名(築山殿)から家康に仕えるよう指示されても、当…
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大相撲秋場所千秋楽

 今場所は、新大関の豊昇龍関とともに、角番の貴景勝関と霧島関が大関の地位を保てるのか、注目されました。霧島関の角番脱出はさほど心配していませんでしたが、貴景勝関については、大関の地位を維持できるのか、さらには、大関から陥落し、幕内上位どころか幕内下位や十両も維持できないくらい状態が悪いのではないか、とかなり不安がありました。正直なところ…
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エル・カスティーヨ洞窟の中部旧石器時代の堆積物のDNA

 ヒト進化研究ヨーロッパ協会第13回総会で、スペイン北部の中部旧石器時代の堆積物のDNA解析結果を報告した研究(Mesa et al., 2023)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P17)。中部旧石器時代から上部旧石器時代の意向は、考古学的記録における道具と装飾品の複雑さと洗練の大きな変化と関連しています。し…
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川田稔『武藤章 昭和陸軍最後の戦略家』

 文春新書の一冊として、文藝春秋社より2023年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、東京裁判において死刑判決を受けたA級戦犯としては最年少だった武藤章の評伝です。ここ十数年ほど、以前よりも日本近現代史の本をずっと多く読むようになり、武藤への関心が高くなったので、一度武藤の評伝を読もうと考えました。武藤は日中戦争勃発時には…
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ヨーロッパ最古級の現生人類のゲノムデータ

 ヒト進化研究ヨーロッパ協会第13回総会で、ヨーロッパ最古級の現生人類(Homo sapiens)のゲノムデータに関する研究(Sümer et al., 2023)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P122)。これまで、ユーラシアにおける中部旧石器時代から上部旧石器時代への移行にまたがる現生人類を特徴づける利用…
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『卑弥呼』第116話「強さと弱さ」

 『ビッグコミックオリジナル』2023年10月5日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハの一行が襲撃されたのは、伊都(イト)国のイトデ王の裏切り以外に考えられない、とオオヒコがヤノハに強く訴えているところで終了しました。今回は、その数時間前に、日下(ヒノモト)国の庵戸宮(イオトノミヤ)で、吉備津彦(キビツヒコ)と妹で日下の日見子(ヒミコ)で…
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LRJの担い手

 ヒト進化研究ヨーロッパ協会第13回総会で、LRJ(Lincombian-Ranisian-Jerzmanowician)の担い手に関する研究(Hublin et al., 2023)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P59)。LRJは中部旧石器時代と上部旧石器時代との間の移行期の技術複合で、イギリスからポーラ…
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大河ドラマ『どうする家康』第35回「欲望の怪物」

 今回は徳川家康と羽柴秀吉の駆け引きが描かれ、家康が秀吉にどのように臣従するのか、注目していました。話を捻ってくる傾向にある本作ですが、秀吉への家康の臣従過程は、これまで大河ドラマなど創作で描かれてきた話と大きく異なるものではなかったように思います。ただ、今回、秀吉の人となりがさらに掘り下げられたことは、後から重要な情報や設定を明かす本…
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ジュラ紀の新種の鳥群獣脚類

 ジュラ紀の新種の鳥群獣脚類に関する研究(Xu et al., 2023)が公表されました。鳥類は後期ジュラ紀の非鳥群獣脚類恐竜を祖先としますが、この進化過程の最初期に関しては化石記録が極めて少なく、時空間的に限定されているため、解明が進んでいません。鳥群系統で初期に分岐した種に関する情報は、鳥類の特徴的なボディープランの進化を理解し、…
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ヒトY染色体の詳細な塩基配列解読

 ヒトY染色体の詳細な塩基配列解読を報告した二つの研究が公表されました。一方の研究(Rhie et al., 2023)はヒトY染色体の完全な塩基配列を報告しています。ヒトのY染色体は、長いパリンドローム配列、縦列反復配列、分節重複といった複雑な反復構造のために、塩基配列の解読とアセンブリがひじょうに難しい、と知られています。そのため、…
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坂本太郎『日本の修史と史学 歴史書の歴史』

 講談社学術文庫の一冊として、2020年8月に講談社より刊行されました。本書は、1958年に至文堂より刊行された『日本の修史と史学』の増補版(1966年、至文堂)を底本とします。電子書籍での購入です。今となってはかなり古いわけですが、碩学による日本の史書の解説なので得るところは多そうですし、碩学の五味文彦氏の解説もあるので読み、じっさい…
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アイスマンの高品質なゲノムデータ

 1991年にアルプス山脈で発見されたアイスマン(Iceman)と呼ばれるミイラの高品質なゲノムデータを報告した研究(Wang et al., 2023)が公表されました。アイスマンはエッツィ(Ötzi)とも呼ばれており、その良好な保存状態からひじょうに有名な紀元前四千年紀後半のミイラです。アイスマンのゲノムデータは以前にも報告されてい…
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種子島の中世人骨のミトコンドリアDNA分析

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、種子島の中世人骨のミトコンドリアDNA(mtDNA)分析結果を報告した論文(篠田他.,2021)が公表されました。日本列島の南西約1000 kmにわたって連なる琉球列島からは、日本列島では最古となる更新世にさかのぼる人類遺骸が発見されています。これは、現生人類(Homo sapiens)がア…
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モウコノウマの社会的関係

 モウコノウマ(Equus ferus przewalskiiもしくはEquus przewalskii)の社会的関係に関する研究(Ozogány et al., 2023)が公表されました。モウコノウマの集団にはハーレムが存在し、それぞれ1頭の種牡馬と数頭の雌の成体とその仔によって構成されている。種牡馬ではない雄の成体の中には、一緒に…
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中原の後期新石器時代の陶製排水体系

 中原の後期新石器時代の陶製排水体系を報告した研究(Li et al., 2023)が公表されました。中国の中原の現在の行政区分では河南省周口市淮陽区に位置する平糧台(Pingliangtai)遺跡は温帯モンスーン気候で、気温と降水量が劇的に変化し、夏の月間降水量は500mmを超えることもあります。平糧台遺跡の集落は氾濫原に位置していた…
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白亜紀の小型哺乳類による恐竜の捕食

 白亜紀の小型哺乳類による恐竜の捕食を報告した研究(Han et al., 2023)が報道されました。恐竜と哺乳類は2億3千万年ほど共存しました。両者は三畳紀後期に誕生し、中生代から新生代にかけて多様化しました(恐竜は鳥類の形で)。両者が様々な形で相互作用していたことは間違いありませんが、その相互作用を示す直接的な化石証拠は稀です。本…
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ヒガシゴリラにおける未知の系統との混合

 ヒガシゴリラ(Gorilla beringe)における未知の系統との混合の可能性を示した研究(Pawar et al., 2023)が公表されました。現生人類(Homo sapiens)とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)など、後期ホモ属の各系統間…
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及川琢英『関東軍 満洲支配への独走と崩壊』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2023年5月に刊行されました。電子書籍での購入です。関東軍は、関東州と南満州鉄道(満鉄)の保護を目的として1919年に成立した、日本陸軍の出先軍です。この場合の「関東」とは、いわゆる万里の長城の東端である山海関以東の地、つまり満洲を意味します。関東軍の成立は、日本にとって「生命線」とされた「満蒙…
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社会現象よりも自然現象で多く見られる超自然的な説明

 超自然的な説明に関する研究(Jackson et al., 2023)が公表されました。世界中の人々は、自分たちの世界を説明するため、超自然的な信仰を利用しています。超自然的な信仰は、世界についての理解の間隙を埋めるために生まれた、と考えられています。有力な一説では、ある現象に関する明確な原因がなく、超自然的な存在や超自然的な力が地球…
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岡山県内古墳出土人骨のミトコンドリアDNA分析

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、岡山県内古墳出土人骨のミトコンドリアDNA(mtDNA)分析結果を報告した論文(篠田他.,2021)が公表されました。次世代配列決定(next-generation sequencing、略してNGS)APLP(Amplified Product-Length Polymorphism、増幅…
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『卑弥呼』第115話「疑心」

 『ビッグコミックオリジナル』2023年9月20日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハが伊都(イト)国を訪れた後、おそらくはと末盧(マツラ)国への道中で襲撃され、ヤノハに同行していた武勇に優れているオオヒコまで倒されたことに愕然とし、窮地に追い込まれたところで終了しました。今回は、その数時間前に、末盧(マツラ)国の玉島(タマシマ)で、末盧…
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デニソワ人についてのまとめ(3)

 もう4年以上前(2019年5月)に、種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)についてまとめました(関連記事)。その後ずっと、改定しようと考えてきましたが、当ブログで取り上げた分だけでもデニソワ人関連の研究はそれなりの数になり、怠惰な性分でもあるので、手をつける気力がなかなか湧きませんでした。しかし、前回のまとめから4年…
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大河ドラマ『どうする家康』第34回「豊臣の花嫁」

 今回は徳川家康と羽柴秀吉の駆け引きが描かれました。秀吉は妹の旭を家康の正室に送り込み、家康を上洛させて臣従させようとしますが、秀吉を嫌って警戒している家康は上洛せず、秀吉はさらに自身の母親(大政所)も家康に差し出そうと決意します。前回で徳川から出奔した石川数正(吉輝)は今回も登場し、石川数正の真意は酒井忠次と本多正信と於愛が推測して語…
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『卑弥呼』第14集発売

 待望の第14集が発売されました。第14集には、 口伝103「ならわし」 https://sicambre.seesaa.net/article/202303article_5.html 口伝104「無類の軍師」 https://sicambre.seesaa.net/article/202303article_21.h…
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井上文則『軍と兵士のローマ帝国』

 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2023年3月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は軍と兵士の視点からのローマ帝国史で、284年のディオクレティアヌス帝の即位以降の後期ローマ帝国軍も重視していることが特徴です。本書は、漢やパルティアやサーサーン朝など同時代の大国と比較して、職業軍人から構成される常備軍だったことがロー…
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古人類学の記事のまとめ(50)2023年4月~2023年8月

 2023年4月~2023年8月のこのブログの古人類学関連の記事を以下に整理しておきます。なお、過去のまとめについては、2023年4月~2023年8月の古人類学関連の記事の後に一括して記載します。私以外の人には役立たないまとめでしょうが、当ブログは不特定多数の読者がいるという前提のもとに執筆しているとはいえ、基本的には備忘録的なものです…
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