ペルー南部で発見された古代の巨大クジラを報告した研究(Bianucci et al., 2023)が報道されました。クジラ目(イルカ、クジラ、ネズミイルカを含む哺乳類の亜目)の化石記録は、陸上動物がどのようにして極端な適応を獲得し、完全な水中生活様式への移行を遂げたのか、明らかにしています。クジラ類では、これは最大体サイズの大幅な増大…
ポーランドの鉄器時代と中世の人類集団のゲノムデータを報告した研究(Stolarek et al., 2023)が公表されました。近年の古代ゲノム研究の進展は目覚ましく、ヨーロッパは最も古代ゲノム研究の蓄積が多い地域と言えるでしょう(関連記事)。古代ゲノム研究は、歴史時代よりも文献のない先史時代の方が優先されている感もありますが、古代ゲ…
樹木の年輪解析により中世フェノスカンジアの気を示した研究(Björklund et al., 2023)が公表されました。地球システムモデルやさまざまな気候代理指標の情報源によって、地球温暖化は少なくとも紀元後において前例がない、と示されています。しかし、樹木の年輪は、数世紀にわたる気候の変化を反映する指標として使用でき、極端な気候の…
サハラ砂漠におけるキツネの適応に関する研究(Rocha et al., 2023)が公表されました。砂漠への動物の適応の進化的過程の解明は、気候変動への適応的反応を理解するのに重要です。キツネ属(Vulpes)の中には、世界最大の高温砂漠であるサハラ砂漠に生息するオジロスナギツネ(Vulpes rueppellii)やフェネック(Vu…
北アメリカ大陸における更新世末の大型動物の絶滅要因に関する研究(O’keefe et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。更新世末には、世界各地に生息していた地球の大型哺乳類の約2/3が絶滅しました。更新世大型動物絶滅の(複数かもしれない)要因は、部分的には化石記録の低い時空間的解像度が考古学および環境の…
カナリア諸島先住民の古代ゲノムデータを報告した研究(Serrano et al., 2023)が公表されました。カナリア諸島は大西洋の比較的低緯度に位置していますが、その入植が紀元後と遅かったこともあり、DNAの保存状態はそれなりに良好なようで、古代DNA研究が進められています。カナリア諸島への関心は、古代DNA研究が進められている地…
ネオンテトラ(Paracheirodon innesi)の避難行動に関する研究(Larrieu et al., 2023)が公表されました。群衆運動は、昆虫から哺乳類まで、および運動性細胞のような非認知体系システムにおいて、異なる種間と異なる規模で観察されます。狭い開口部から脱出を余儀なくされた場合、ほとんどの陸生動物は粒状物質のよう…
古代ゲノムデータからフランス新石器時代の社会構造を推測した研究(Rivollat et al., 2023)が公表されました。古代ゲノム研究はヨーロッパにおいてとくに発展しており、親族関係や社会構造についての解明も進んでいます。本論文は、フランスの新石器時代の遺跡を対象に、大規模な家系図の復元を提示しています。これら新石器時代住民は核…
始新世の小柄なクジラを報告した研究(Mattila et al., 2023)が公表されました。クジラが小型の陸生偶蹄類の祖先から出現して間もなく、その基底部系統(古鯨類)はより特殊な水生の生態系に生息するようになり、完全な水生の生活様式の採用までに至った驚異的な適応放散を経ました。この適応戦略は、地理的に広く分布する絶滅したバシロサ…
石器時代ヨーロッパ中央部および東部の古代人のゲノムデータを報告した研究(Mattila et al., 2023)が公表されました。近年の古代ゲノム研究の発展には目覚ましいものがあり、ヨーロッパは最も進んでいる地域と言えるでしょう(関連記事)。農耕の開始は人類史における一大転機で、考古学でも古くから注目されており、古代ゲノム研究でも世…
ヨーロッパ南東部の新石器時代から前期青銅器時代までの古代人135個体のゲノムデータを報告した研究(Penske et al., 2023)が公表されました。完新世のヨーロッパにおいては、新石器時代におけるアナトリア半島からの農耕民、および後期新石器時代(Late Neolithic、略してLN)以降におけるポントス・カスピ海草原(ユー…
ヒト脳の進化において細胞の複雑性を促進した分子的特徴に関する研究(Caglayan et al., 2023)が公表されました。ヒト脳に固有の機能性には、ヒト特異的なゲノム変化が関与しています。ヒト脳に見られる細胞の不均一性と、遺伝子発現の複雑な調節は、ヒト特異的な分子的特徴を、細胞分解能で明らかにすることの必要性を浮き彫りにしていま…
南アメリカ大陸東部の沿岸の古代人のゲノムデータを報告した研究(Ferraz et al., 2023)が公表されました。近年の古代ゲノム研究の進展は目覚ましく、これまでに歴史学や考古学や人類学では充分に把握できていなかった完新世人口史の側面の解明にも大きく貢献しています(関連記事)。アメリカ大陸の古代ゲノム研究も近年大きく進展している…
アフリカ西部における中期石器時代(Middle Stone Age、略してMSA)の長期の持続に関する研究(Niang et al., 2023)が公表されました。サハラ砂漠以南のアフリカにおいて、MSAは前期石器時代(Early Stone Age、略してESA)に続き、MSAの後には後期石器時代(Later Stone Age、略…
癌の転帰の性差に関する二つの研究が公表されました。一方の研究(Abdel-Hafiz et al., 2023)は、Y染色体を失った膀胱癌細胞が、免疫抑制性の高い腫瘍微小環境を生み出し、転帰の悪化の一因になったことを示します。Y染色体喪失(Loss of the Y chromosome、略してLOY)は、膀胱癌の10~40%を含む多…
シチリアオオカミのゲノムデータを報告した研究(Ciucani et al., 2023)が公表されました。シチリアオオカミはシチリア島に生息しており、1930年代~1960年代に絶滅した、とされています。本論文は、シチリア島とイタリア半島のオオカミは同じ進化系統に由来し、シチリアオオカミは銅器時代のイヌの祖先系統(祖先系譜、祖先成分、…