大河ドラマ『どうする家康』第29回「伊賀を越えろ!」

 今回は、徳川家康の生涯において有数の危機とされる本能寺の変後の伊賀越えが描かれましたが、本作では恐らく史実以上の危機とされていたように思います。家康は服部半蔵の進言により帰国経路として伊賀越えを選択しますが、これが悪手で、家康は窮地に陥ります。本作では服部半蔵の失敗が目立ち、滑稽な役割を担っている感があります。家康は伊賀で服部半蔵とと…
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朝鮮民主主義人民共和国学界の古代史を読み解く

 表題の論文(松浦., 2022)を読みました。本論文は、日本の非専門家ではほとんど知られていないだろう、北朝鮮の古代史学界の動向を取り上げており、もちろん私もほとんど知らなかったため、たいへん有益でした。本論文によると、北朝鮮では建国後、1960年代半ばころに独自の古代史体系と呼ぶべきものがはっきりと見えてくるようになったそうで、それ…
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川村裕子編『誰も書かなかった 清少納言と平安貴族の謎』

 中経の文庫の一冊として、2013年11月にKADOKAWAより刊行されました。電子書籍での購入です。本書は問いと回答の形式で構成されており、著書の『枕草子』は有名であるものの、履歴や人物像についてはさほど知られていない清少納言について、一般向けに基礎知識から分かりやすく伝えよう、との工夫が窺えます。来年(2024年)の大河ドラマの主人…
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マチュ・ピチュ住民の遺伝的起源

 マチュ・ピチュ(Machu Picchu)遺跡で発見された人々のゲノムデータを報告した研究(Salazar et al., 2023)が公表されました。マチュ・ピチュは世界的にたいへん有名で人気があるインカ帝国期の遺跡で、多くの観光客が訪れていますが、その住民の遺伝的起源についてはほとんど分かっていません。本論文は、マチュ・ピチュ遺跡…
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ウェールズで発見された新たなバージェス頁岩型動物相

 ウェールズで発見された新たなバージェス頁岩型動物相を報告した研究(Botting et al., 2023)が公表されました。バージェス頁岩型堆積物には体内の臓器などの軟部組織が保存されており、カンブリア紀(5億4100万~4億8500万年前頃)の動物進化を理解に重要であり、古代の生物の形態や動物が支配的だった初期の群集の生態系を知る…
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バンドウイルカの古代ゲノムデータ

 バンドウイルカ(Tursiops truncatus)の古代ゲノムデータを報告した研究(Louis et al., 2023)が公表されました。古代ゲノム研究は近年ますます盛んになっており、ヒトの事例はとくに注目度が高いものの、非ヒト動物の古代ゲノムデータの報告も増えています。本論文は、バンドウイルカの古代ゲノムデータから、新たな生息…
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大河ドラマ『どうする家康』第28回「本能寺の変」

 今回は本能寺の変が描かれました。大河ドラマでは定番の本能寺の変ですが、前回、織田信長が自分への徳川家康の殺意を見抜いたうえで、覚悟を決めたなら自分を殺してみろ、と煽ったことで、通説の本能寺の変とどう整合させてくるのか、注目していました。家康は、酒井忠次と石川数正の諫言にも関わらず、信長を討つ決意は変わらず、堺に向かって有力者と会談しま…
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大相撲名古屋場所千秋楽

 今場所は、直近2場所が三役でどちらも二桁勝利を挙げ、合計勝利数が21勝の豊昇龍関と21勝の若元春関と22勝の大栄翔関という3関脇の大関昇進が注目されました。また、不祥事で大関から三段目まで番付を下げた朝乃山関が東前頭4枚目と、上位陣と本格的に対戦するまで戻ってきたことも話題になりました。先場所長期休場明けで優勝した横綱の照ノ富士関は出…
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「在日」にとっての古代史とは何であったのか

 表題の論文(李., 2022)を読みました。本論文は、高松塚古墳の壁画発見の大々的報道(1972年3月21日)を契機とする、いわゆる「古代史ブーム」において、金達寿氏と李進熙氏が果たした役割に焦点を当てるとともに、韓国の学界状況も解説しており、不勉強な私にとってはたいへん有益でした。過去の韓国の学界状況について、韓国の代表的な古代史研…
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繁田信一『天皇たちの孤独 玉座から見た王朝時代』

 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2006年12月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書はおもに『小右記』に基づいて、王朝時代の天皇の一般的にはあまり知られていないだろう具体的な振る舞いと心境を叙述していきます。一条天皇については、これまで概説などで読んでいても忘れていたかもしれませんが、藤原道隆・伊周父子との確執について詳…
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『卑弥呼』第112話「赤い土くれ」

 『ビッグコミックオリジナル』2023年8月5日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハが那(ナ)国のウツヒオ王に、津島(ツシマ、現在の対馬でしょう)国のアビル王が自分たち筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)連合に従わねば、人知れず消えてもらう、と語ったところで終了しました。今回は、暈(クマ)国の鞠智里(ククチノサト、現在の熊本県菊…
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ニュージーランドの絶滅したモアのミトコンドリアDNA解析

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、ニュージーランドの絶滅した鳥であるモアのミトコンドリアDNA(mtDNA)データを報告した研究(Verry et al., 2022)が公表されました。近年の古代DNA研究の進展は目覚ましく、ヒトの場合は大きく報道されることもありますが、非ヒト動物の古代DNA研究も進んでいます。本論文は、ニュージー…
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タイで発見された更新世の絶滅アリゲーター種

 タイで発見された更新世の絶滅アリゲーター種を報告した研究(Darlim et al., 2023)が公表されました。アリゲーター科の中ではアメリカ大陸以外で唯一現生するヨウスコウアリゲーター(Alligator sinensis)の謎めいた進化の起源をたどるには、アジアから産出するワニの化石が不可欠です。アジアの化石記録はひじょうに少…
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アナトリア半島とレヴァントの先土器新石器時代B集団の学際的研究

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、アナトリア半島とレヴァントの先土器新石器時代B(Pre-Pottery Neolithic B、略してPPNB)集団のゲノムおよび同位体データを報告した研究(Wang et al., 2023)が公表されました。本論文は、『米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the Nationa…
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大河ドラマ『どうする家康』第27回「安土城の決闘」

 今回は、織田信長と徳川家康の関係を軸に、本能寺の変へと至る過程が描かれました。信長は駿河での歓待の返礼として、安土城に家康を招きます。前回、家康は信長を殺害し、天下を取る、と家臣団の前で宣言しており、具体的な構想が明かされるのか、注目していましたが、家康は信長が京都では手薄な状態でいることを予測し、すでに服部党などに信長殺害の工作を命…
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人類進化史におけるスラウェシ島の注目すべき発見

 近年、人類進化史において注目すべきスラウェシ島での発見が色々と報告されているので、一度まとめておきます。スラウェシ島は生物地理学的区分では、東方のウォレス線と西方のライデッカー線との間に挟まれたワラセアに分類されます。ワラセアはユーラシア本土のアジア南東部とサフルランド(更新世の寒冷期には現在のオーストラリア大陸とニューギニア島とタス…
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坂野潤治『昭和史の決定的瞬間』

 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2004年2月に刊行されました。電子書籍での購入です。今となってはかなり古いと言えますが、碩学が1936~1937年を日本の分岐点と考えて詳しく検証しているとのことなので、私にとって今でも得るものは多いのではないか、と思って読みました。本書はまず、1931~1932年の危機と、1936~1937年の…
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ヒトの急速眼球運動睡眠に似たタコの睡眠段階(追記有)

 ヒトの急速眼球運動睡眠(レム睡眠)に似たタコの睡眠段階を報告した研究(Pophale et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。多くの脊椎動物は睡眠中、急速眼球運動睡眠と徐波睡眠という、少なくとも2つの睡眠相を交互に示し、前者は覚醒時に似た脳活動を、後者は同期的な脳活動をそれぞれ特徴の一部としています。こ…
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中国の少数民族のパンゲノム参照配列

 中国の少数民族のパンゲノム参照配列を報告した研究(Gao et al., 2023)が公表されました。パンゲノムとは、1個体の全遺伝情報(ゲノム)だけではなく、分類群が有する全ての遺伝情報です。ヒトのゲノミクスでは、単一の参照配列からパンゲノムの形へと移行しつつありますが、この分野でアジア系集団を研究の対象とすることはまだ少ないのが現…
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イタリアのアルプス山脈の銅器時代の親族関係

 イタリアのアルプス山脈の銅器時代の墓で発見された人類遺骸の親族関係を特定した研究(Paladin et al., 2023)が公表されました。古ゲノミクスは未解決の考古学的問題への回答を提供します。非測定的特徴のみにより推測された親族関係には、遺伝学的裏づけが必要です。古ゲノミクスは解釈における社会文化的偏りの克服に役立ちます。本論文…
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大河ドラマ『どうする家康』第26回「ぶらり富士遊覧」

 今回は、1579年(以下、西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)の瀬名(築山殿)と松平信康の死後、徳川家康がどう変わっていくのか、という点に注目して視聴しました。話の方は1581年の高天神城陥落から1582年の武田滅亡まで一気に進み、その後、家康が織田信長を駿河で歓待することになり、家康と信長の関係が中心に描かれました。妻子…
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土器から示されるヨーロッパ狩猟採集民間のつながり

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、土器からヨーロッパ狩猟採集民間のつながりを報告した研究(Dolbunova et al., 2023)が公表されました。人類史は世界的な技術伝播により形成されてきましたが、このような過程を可能にしたものについての理解は限られています。ヨーロッパ全体への農耕拡散についてはこれまでの研究で調べられてきま…
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銅器時代のイベリア半島における女性指導者(追記有)

 銅器時代のイベリア半島に女性指導者が存在した可能性を報告した研究(Cintas-Peña et al., 2023)が公表されました。本論文は、銅器時代のイベリア半島の少なくとも一部地域では、女性が権力者の地位を占めていたかもしれない、と指摘します。これは、現生人類(Homo sapiens)が柔軟な社会を築くことと関連しているでしょ…
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仁藤敦史『女帝の世紀 皇位継承と政争』

 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2006年3月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、7~8世紀に多かった「女帝」について、「中継ぎ」などといった通説を検証し、改めて日本史に位置づけます。本書はまず、現代の皇位継承問題と絡めて、女帝の子を親王とする大宝律令の規定から、女系での皇位継承が古代には認められていた、と主張します…
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遺伝的多様性を考慮した多遺伝子得点の正確度

 遺伝的多様性を考慮した多遺伝子得点(Polygenic score、略してPGS)の正確度に関する研究(Ding et al., 2023)が公表されました。PGSは、異なる個体集団間での可搬性が、たとえば、祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)や健康の社会的決定要因などによって限られており、その公平な使用が妨げら…
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『卑弥呼』第111話「示齊の意味」

 『ビッグコミックオリジナル』2023年7月20日号掲載分の感想です。前回は、山社(ヤマト)において、暈(クマ)国より無事帰還したアカメから、津島(ツシマ、現在の対馬でしょう)国のアビル王が海の彼方の大国(漢王朝でしょうか)の歴史を偽っている、と報告を受けたヤノハが、「本当」の真が手に入った、と満足そうにミマアキに言うところで終了しまし…
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サウスカロライナ州の墓地で発見されたアフリカ系の人々のゲノム解析

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、アメリカ合衆国サウスカロライナ州の墓地で発見された18世紀後半の遺骸のゲノムデータを報告した研究(Fleskes et al., 2023)が公表されました。近年、アメリカ大陸へと植民地期に奴隷として強制連行されてきた人々およびその子孫の遺伝学的研究が盛んです(関連記事)。本論文は、アチャールストン…
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真核生物のアスガルド古細菌内での位置づけ

 真核生物のアスガルド(Asgard)古細菌内での位置づけに関する研究(Eme et al., 2023)が公表されました。真核生物誕生の過程(eukaryogenesis)、つまり祖先原核細胞からの真核細胞の出現を導いた一連の進化事象に関しては、現在議論が続いており、アスガルド上門古細菌のいくつかの構成員が真核生物に最も近縁な古細菌と…
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大河ドラマ『どうする家康』第25回「はるかに遠い夢」

 今回は瀬名(築山殿)と松平信康の最期が描かれました。瀬名の最期が本作の山場になることは、早くから週刊誌などで明かされていたので、たいへん注目していましたが、前回の内容にあまりにも失望したので、かなり低い期待値で視聴しました。同じく徳川家康を主人公とする大河ドラマながら、1983年放送の『徳川家康』とは瀬名の人物像が大きく異なる本作では…
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ホモ・フロレシエンシスの起源

 2004年に発見が公表されたホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis)については、一度体系的に整理しようと以前から考えているものの、なかなか気力が湧かず、昨年(2022年)の短いまとめ(関連記事)からも進展していません。とりあえず、少しでも前進させるため、今回は、ホモ・フロレシエンシスの起源というか、人類進化史の系統…
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鈴木貞美『日露戦争の時代 日本文化の転換点』

 平凡社新書の一冊として、平凡社より2023年1月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、日露戦争の頃を日本文化の転換点と把握し、その変容を検証します。近代日本における文化の変容は、私も含めて多くの現代日本人が漠然と考えているでしょうが、それを体系的に説明するのは専門家でないとなかなか難しいので、どのように日本における文化の変容…
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