マチュ・ピチュ(Machu Picchu)遺跡で発見された人々のゲノムデータを報告した研究(Salazar et al., 2023)が公表されました。マチュ・ピチュは世界的にたいへん有名で人気があるインカ帝国期の遺跡で、多くの観光客が訪れていますが、その住民の遺伝的起源についてはほとんど分かっていません。本論文は、マチュ・ピチュ遺跡…
ウェールズで発見された新たなバージェス頁岩型動物相を報告した研究(Botting et al., 2023)が公表されました。バージェス頁岩型堆積物には体内の臓器などの軟部組織が保存されており、カンブリア紀(5億4100万~4億8500万年前頃)の動物進化を理解に重要であり、古代の生物の形態や動物が支配的だった初期の群集の生態系を知る…
バンドウイルカ(Tursiops truncatus)の古代ゲノムデータを報告した研究(Louis et al., 2023)が公表されました。古代ゲノム研究は近年ますます盛んになっており、ヒトの事例はとくに注目度が高いものの、非ヒト動物の古代ゲノムデータの報告も増えています。本論文は、バンドウイルカの古代ゲノムデータから、新たな生息…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、ニュージーランドの絶滅した鳥であるモアのミトコンドリアDNA(mtDNA)データを報告した研究(Verry et al., 2022)が公表されました。近年の古代DNA研究の進展は目覚ましく、ヒトの場合は大きく報道されることもありますが、非ヒト動物の古代DNA研究も進んでいます。本論文は、ニュージー…
タイで発見された更新世の絶滅アリゲーター種を報告した研究(Darlim et al., 2023)が公表されました。アリゲーター科の中ではアメリカ大陸以外で唯一現生するヨウスコウアリゲーター(Alligator sinensis)の謎めいた進化の起源をたどるには、アジアから産出するワニの化石が不可欠です。アジアの化石記録はひじょうに少…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、アナトリア半島とレヴァントの先土器新石器時代B(Pre-Pottery Neolithic B、略してPPNB)集団のゲノムおよび同位体データを報告した研究(Wang et al., 2023)が公表されました。本論文は、『米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the Nationa…
ヒトの急速眼球運動睡眠(レム睡眠)に似たタコの睡眠段階を報告した研究(Pophale et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。多くの脊椎動物は睡眠中、急速眼球運動睡眠と徐波睡眠という、少なくとも2つの睡眠相を交互に示し、前者は覚醒時に似た脳活動を、後者は同期的な脳活動をそれぞれ特徴の一部としています。こ…
中国の少数民族のパンゲノム参照配列を報告した研究(Gao et al., 2023)が公表されました。パンゲノムとは、1個体の全遺伝情報(ゲノム)だけではなく、分類群が有する全ての遺伝情報です。ヒトのゲノミクスでは、単一の参照配列からパンゲノムの形へと移行しつつありますが、この分野でアジア系集団を研究の対象とすることはまだ少ないのが現…
イタリアのアルプス山脈の銅器時代の墓で発見された人類遺骸の親族関係を特定した研究(Paladin et al., 2023)が公表されました。古ゲノミクスは未解決の考古学的問題への回答を提供します。非測定的特徴のみにより推測された親族関係には、遺伝学的裏づけが必要です。古ゲノミクスは解釈における社会文化的偏りの克服に役立ちます。本論文…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、土器からヨーロッパ狩猟採集民間のつながりを報告した研究(Dolbunova et al., 2023)が公表されました。人類史は世界的な技術伝播により形成されてきましたが、このような過程を可能にしたものについての理解は限られています。ヨーロッパ全体への農耕拡散についてはこれまでの研究で調べられてきま…
銅器時代のイベリア半島に女性指導者が存在した可能性を報告した研究(Cintas-Peña et al., 2023)が公表されました。本論文は、銅器時代のイベリア半島の少なくとも一部地域では、女性が権力者の地位を占めていたかもしれない、と指摘します。これは、現生人類(Homo sapiens)が柔軟な社会を築くことと関連しているでしょ…
遺伝的多様性を考慮した多遺伝子得点(Polygenic score、略してPGS)の正確度に関する研究(Ding et al., 2023)が公表されました。PGSは、異なる個体集団間での可搬性が、たとえば、祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)や健康の社会的決定要因などによって限られており、その公平な使用が妨げら…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、アメリカ合衆国サウスカロライナ州の墓地で発見された18世紀後半の遺骸のゲノムデータを報告した研究(Fleskes et al., 2023)が公表されました。近年、アメリカ大陸へと植民地期に奴隷として強制連行されてきた人々およびその子孫の遺伝学的研究が盛んです(関連記事)。本論文は、アチャールストン…
真核生物のアスガルド(Asgard)古細菌内での位置づけに関する研究(Eme et al., 2023)が公表されました。真核生物誕生の過程(eukaryogenesis)、つまり祖先原核細胞からの真核細胞の出現を導いた一連の進化事象に関しては、現在議論が続いており、アスガルド上門古細菌のいくつかの構成員が真核生物に最も近縁な古細菌と…