シャチの近親交配

 シャチの近親交配と保全への影響に関する研究(Kardos et al., 2023)が公表されました。生物多様性保全のためには、絶滅危惧種の個体数を増加または減少させる要因を理解することがきわめて重要です。保全活動では、環境悪化や乱獲など、絶滅危惧種個体群の回復を制限するような外因的な脅威に対処することが多くなります。近親交配抑制など…
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ソ連における人類進化研究の進展とエンゲルスの見解の「原則的解決の正しさ」

 古書店で購入したことは確かであるものの、いつどの店舗で購入したのかまったく覚えていないのが、ユ・ヴェ・ブロムレイ、ア・イ・ペルシツ、エス・ア・トカレフ編、中島寿雄訳『マルクス主義と人類社会の起源』(大月書店、1974年)です。人類社会の構造について以前よりも関心を抱く契機になったのが、ネアンデルタール人(Homo neandertha…
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原生代における真核生物の痕跡

 原生代における真核生物の痕跡を報告した研究(Brocks et al., 2023)が報道されました。真核生物には、20億年という長い歴史があると考えられていますが、真核生物が繁栄を遂げたのは地球史の意外なほど遅い時期だった、と推測されています。この見解は、原生代の中期(16億~8億年前頃)の海洋堆積物中において真核生物の特徴を持つ化…
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180万年前頃までさかのぼるジャワ島のホモ・エレクトスの年代

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、ホモ・エレクトス(Homo erectus)のジャワ島への到達年代は180万年前頃までさかのぼることを示した研究(Husson et al., 2022)が公表されました。ホモ・エレクトスのジャワ島への到達年代について、近年では以前の想定よりも新しかった、と指摘する研究も提示されていますが(関連記事…
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大河ドラマ『どうする家康』第24回「築山へ集え!」

 今回も瀬名(築山殿)の動向が中心に描かれました。瀬名が武田の間者である千代に、武田の重臣を呼ぶよう要請し、岡崎まで穴山信君が瀬名を訪ねてきたことで、これが瀬名と息子の松平信康の死へとつながるのだろうな、と予想していましたが、瀬名が武田方に何を提案しようと考えているのか、前回までは明示されていなかったので、注目していました。瀬名の画策は…
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5万年以上前となるネアンデルタール人の線刻

 5万年以上前となるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の線刻を報告した研究(Marquet et al., 2023)が公表されました。本論文は、フランスのロワール渓谷に位置するラ・ロッシュ・コタール(La Roche-Cotard、略してLRC)洞窟の壁面の線刻の年代が5万年以上前であることと、それがネア…
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木本好信 『奈良時代 律令国家の黄金期と熾烈な権力闘争』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2022年11月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は政治史を中心とした奈良時代の概説です。本書は、672年(以下、西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)の壬申の乱の後の天武朝と持統朝と文武朝の政治史にも短く言及したうえで、710年の平城京遷都から784年の長岡京遷都までの歴史を…
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飛び道具が大好きなNHK

 先日(2023年6月18日)、NHKスペシャル『ヒューマンエイジ 人間の時代 第2集 戦争 なぜ殺し合うのか』が放送されました。この番組では、飛び道具の発明により人間は狩られる側から狩る側へと大躍進した、と語られていました。この番組での飛び道具とは、単に槍や石器(もしくは自然の石)を投げることではなく、投槍器や弓矢を指しているようでし…
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アフリカの人口史

 アフリカの人口史に関する総説(Pfennig et al., 2023)が公表されました。最近の発展にも関わらず、アフリカの人口集団は遺伝学的研究において依然としてひじょうに過小評価されており、アフリカ人の遺伝的差異と人口構造に関するより多くの研究が必要です。そうした研究は、現代人の起源についての新たな洞察をもたらすだけではなく、公平…
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『卑弥呼』第110話「本当の真」

 『ビッグコミックオリジナル』2023年7月5日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハとミマアキが、津島(ツシマ、現在の対馬でしょう)国のアビル王が伝えた大陸の情勢は正しいのか、悩んでいるところで終了しました。今回は、暈(クマ)の国の山中にて、逃亡するアカメとナツハ(チカラオ)を、鞠智彦(ククチヒコ)の配下の志能備(シノビ)が追っている場面…
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北アメリカ大陸東岸の初期植民地住民のゲノムデータ

 北アメリカ大陸東岸の初期植民地住民のゲノムデータを報告した研究(Fleskes et al., 2023)が公表されました。近世以降のヨーロッパ系勢力による広範な植民地化の進展は世界規模の人口動態に大きな影響を及ぼし、とくにアフリカからアメリカ大陸へは多くの人々が奴隷として強制的に移動させられ、カリブ海地域を初めとしてアメリカ大陸圏の…
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大河ドラマ『どうする家康』第23回「瀬名、覚醒」

 今回は瀬名(築山殿)の動向を中心に話が展開しました。すでに瀬名が武田の間者である千代と接触していることは描かれており、長篠合戦後に徳川家康の嫡男である信康が精神的変調をきたしたこととともに、本作最大の山場と明かされている瀬名の死がどう描かれるのか、注目していましたが、瀬名は千代と相変わらず接触しており、千代に和議を提案します。しかし千…
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新石器時代のアフリカ北西部におけるイベリア半島とレヴァントからの遺伝的影響

 新石器時代のアフリカ北西部におけるイベリア半島とレヴァントからの遺伝的影響を報告した研究(Simões et al., 2023)が公表されました。近年の古代ゲノム研究の飛躍的な進展により、世界各地での新石器時代への移行の様相が次第に明らかになってきました(関連記事)。その結果窺えるのは、新石器時代への移行の様相は世界各地で異なってお…
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師茂樹『最澄と徳一 仏教史上最大の対決』

 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2021年10月に刊行されました。電子書籍での購入です。当ブログ開始前に読んだので当ブログでは取り上げていませんが、末木文美士『日本宗教史』(岩波書店、2006年)にて、最澄と徳一の「三一権実諍論(一三権実論争)」が日本宗教史においてたいへん重要だった、との見解を知り、もう10年近く前となる2…
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ラオスの6万年以上前の現生人類遺骸

 ラオスで発見された現生人類(Homo sapiens)遺骸の年代が6万年以上前にさかのぼることを報告した研究(Freidline et al., 2023)が公表されました。ラオスのフアパン(Huà Pan)県にあるタムパリン(Tam Pa Ling、略してTPL)洞窟遺跡では、4万年以上前の現生人類遺骸(TPL1およびTPL2)が発…
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非鳥類獣脚類恐竜の小型化と大型化

 体の大きさがさまざまな、非鳥類獣脚類恐竜クレード(単系統群)の小型化と大型化に関する研究(D'emic et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。進化の過程で、多くの種がひじょうに大きな体格に進化してきました。動物の進化史において多くの分類群が大型化もしくは小型化し、きわめて近縁の種でも体の大きさに違いが…
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現生人類における行動の複雑さの起源

 現生人類(Homo sapiens)の行動の複雑さの起源に関する研究が(Scerri, and Will., 2023)が公表されました。現生人類の起源地がアフリカであることは、今ではほぼ定説になっている、と言えそうですが(関連記事)、その具体的な様相については、アフリカ内における現生人類と非現生人類ホモ属との混合を想定するものや、そ…
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サメとガンギエイとアカエイへの白亜紀から古第三紀の大量絶滅の影響

 サメとガンギエイとアカエイへの白亜紀から古第三紀の大量絶滅の影響に関する研究(Guinot, and Condamine., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。白亜紀と古第三紀の間(K-Pg)の6600万年前頃に最後の大量絶滅事象が起き【現在、大量絶滅が進行中との見解も有力かもしれません】、地球上の55~76%の…
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大河ドラマ『どうする家康』第22回「設楽原の戦い」

 今回は長篠合戦が描かれました。長篠合戦については、本作の時代考証を担当している平山優氏の著書があり、先進的な織田家と後進的な武田家という把握に説得力はなく、長篠の戦いの結果を先進的・後進的という枠組みで説明することに妥当性がない、と指摘されています(関連記事1および関連記事2)。本作では長篠合戦がどのように描かれるのか、注目していまし…
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日本列島の人類史に関する問題の整理

 最近、日本列島における4万年以上前の人類の存在の可能性や、日本語の起源などについて考えることがあったので、一度おもに古代ゲノム研究に基づいて関連する情報をまとめるとともに、遺伝学に基づく人類の進化や拡散に関する通俗的な見解について、普段から考えていることも整理します。最近の当ブログの記事は、論文を訳して時に私見も少し付け加えるだけで終…
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渡辺靖『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋』

 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2022年8月に刊行されました。電子書籍での購入です。アメリカ合衆国(以下、米国)について日本社会では普段から報道が多く、私も何となくある程度知った気になっているものの、米国についての体系的な本を読むことはほとんどないので、米国理解の助けになるのではないかと思い、読みました。アメリカ合衆国が「…
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避妊による同性間の性的行動と関わる遺伝的基盤への影響

 避妊による同性間の性的行動と関わる遺伝的基盤への影響に関する研究(Song, and Zhang., 2023)が公表されました。同性間の性的行動については、生物学的側面からも強い関心が寄せられてきており、さまざまな研究があり、それぞれ1000人以上のヨーロッパ系の男性の同性愛者と異性愛者を対象として、遺伝的基盤を調べた研究を当ブログ…
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ペルム紀末の大絶滅から急速に回復した海洋生態系

 海洋生態系のペルム紀末の大絶滅からの急速な回復を報告した研究(Dai et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。化石群集の保存状態が良好であることは、深部時間における進化的革新を理解するうえできわめて重要な知見です。現在見られるような海洋生態系の構造は、約2億5200万年前のPTME発生後に出現しました。…
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考古学的観点からの日本語と朝鮮語の起源

 考古学的観点から日本語と朝鮮語の起源を検証した研究(Miyamoto., 2022)が公表されました。本論文は考古学的観点から、アジア北東部における日本語祖語と朝鮮語祖語の拡大の様相を検証しています。本論文は、日本語祖語と朝鮮語祖語の起源はマンチュリア(満洲)南部にあり、朝鮮半島には朝鮮語祖語よりも日本語祖語の方が早く流入し、その後で…
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『卑弥呼』第109話「二つの真」

 『ビッグコミックオリジナル』2023年6月20日号掲載分の感想です。前回は、山社(ヤマト)にて、那(ナ)国のウツヒオ王が連れてきた津島(ツシマ、現在の対馬でしょう)国のアビル王に、ヤノハが海の向こうの大国の話をぜひ聞かせていただきたい、と要請したところで終了しました。前回、暈(クマ)国のイ家のタケル王から、アビル王は暈国の大夫で実質的…
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大河ドラマ『どうする家康』第21回「長篠を救え!」

 今回は長篠合戦へと至る経緯が描かれました。武田軍が徳川方の長篠城を包囲し、鳥居強右衛門が徳川家康に救援を要請し、家康は織田信長に、大軍を派遣しなければ織田と手切れする、と伝えて信長は自ら大軍を率いて出陣しますが、信長と家康との間には緊張感が漂い、信長はこの機に徳川を家臣にする、と秀吉から家康と家臣に伝えさせます。確かに、織田と徳川の関…
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4000年前頃のブリテン島のペスト菌のゲノム

 4000年前頃のブリテン島のペスト菌のゲノムを報告した研究(Swali et al., 2023)が公表されました。近年における古代ゲノム研究の進展は目覚ましく、ヒトを中心に動物のゲノム解析も盛んですが、人類史を大きく変えてきたと考えられる、ペスト菌などの病原体のゲノム解析も珍しくなくなりました。こうした研究も、やはりヨーロッパでとく…
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水ノ江和同『縄文人は海を越えたか 言葉と文化圏』

 朝日選書の一冊として、朝日新聞出版より2022年4月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書はまず、縄文文化の範囲が現在の日本国の領土とほぼ重なる、と指摘します。つまり、北方は宗谷海峡と択捉海峡まで、伊豆諸島では八丈島ので、九州では対馬島と沖縄県の久米島までとなります。縄文時代にこの範囲を越えて、周辺地域由来と考えられる遺物(考古…
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雄のケナガマンモスの発情期

 雄のケナガマンモスの発情期に関する研究(Cherney et al., 2023)が公表されました。生体媒質に含まれるホルモンからは、発達や生殖や疾病やストレスに関連する内分泌活動が、さまざまな時間規模で明らかになります。血清からはその時に循環している濃度が得られるのに対し、各種の組織には経時的に蓄積したステロイドホルモンが記録されて…
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アフリカからの解剖学的現代人の拡散における遺伝的選択と気候要因の役割

 アフリカからの解剖学的現代解剖学的現代人(anatomically modern human、略してAMH、現生人類、Homo sapiens)の拡散における遺伝的選択と気候要因の役割に関する研究(Tobler et al., 2023)が公表されました。本論文は、古代人のゲノムにおいて推測された57ヶ所の「硬い一掃(hard swe…
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