複雑だったアフリカにおける現生人類の進化

 アフリカにおける現生人類(Homo sapiens)の複雑な進化を推測した研究(Ragsdale et al., 2023)が報道されました。現生人類の起源がアフリカにあることは、今では広く認められていますが、アフリカにおいて現生人類がどのように進化したのかについては、局所的な起源地の想定から複数の地域集団間の複雑な相互作用を想定する…
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大河ドラマ『どうする家康』第20回「岡崎クーデター」

 今回は岡崎での徳川家臣の謀叛計画が描かれました。本作と同じく徳川家康を主人公とする1983年放送の大河ドラマ『徳川家康』では、一時は大賀(本作では近年の研究の進展を踏まえて大岡)弥四郎が主人公とも言えるほど目立っていましたが、本作の大岡弥四郎は今回のみの登場となりそうで(今後、回想で描かれるかもしれませんが)、そこまで重要な役割を担う…
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大相撲夏場所千秋楽

 今場所は番付発表後に逸ノ城関の引退が発表され、昨年(2022年)名古屋場所で優勝してからまだ1年も経っておらず、先場所は不祥事による処分のため降格していた十両で優勝していたので、本当に驚くとともに、2014年の新入幕の頃からずっと応援してきただけに、たいへん残念に思いました。逸ノ城関については近年色々と醜聞が報じられており、それがどれ…
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シャチの母親の生活史

 シャチの母親の生活史戦略を検証した研究(Weiss et al., 2023)が公表されました。動物の繁殖戦略はさまざまで、母親が性成熟後の子供の世話をする事例も知られています。たとえばボノボ(Pan paniscus)は、娘よりも息子の世話に熱心で、息子の適応度を上げている、と報告されています(関連記事)。一方、ボノボと最近縁の分類…
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小野寺史郎『戦後日本の中国観 アジアと近代をめぐる葛藤』

 中公選書の一冊として、中央公論新社より2021年11月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、日本における中国予測がよく外れる要因として、中華人民共和国の不透明性ばかりではなく、日本社会の中国観も大きいのではないか、との認識から、近現代日本の中国観を検証します。日本の中国観は、その時の日中関係に大きく影響を受け、中国を実態以上…
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スロベニアの古代末期の被葬者の家族関係

 スロベニアの古代末期の被葬者の家族関係を分析した研究(Pajnič et al., 2023)が公表されました。古代DNA研究はユーラシア西部、とくにヨーロッパで進んでおり(関連記事)、ヨーロッパでは古代DNAに基づく親族関係の分析も盛んです(関連記事)。古代DNA研究は先史時代だけではなく有史時代でも進められており、文献に基づいて古…
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スマホの交換

 5年近く前となる2018年7月にスマホを買い替えましたが(関連記事)、最近故障して交換することになりました。故障したスマホは2017年冬に発売されており、保険適用で交換の場合原則として同じものですが、在庫がなかったため、2019年冬に発売された機種への変更となり、性能も故障した機種を上回っており、画面は液晶から有機ELになりました。た…
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性愛的行動によるウイルスの拡散

 性愛的行動によるウイルスの拡散に関する解説(Arbøll, and Rasmussen., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。最近の研究では、ヒトの恋愛的で性的な接吻の最初の既知の記録は、アジア南部(インド)の青銅器時代の写本に由来する、と主張されています。しかし、かなりの量の見落とされてきた証拠からこの前提に異…
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大河ドラマ『どうする家康』第19回「お手付きしてどうする!」

 今回は徳川家康と結城秀康の母親であるお万(長勝院殿)との関係が描かれました。秀康は築山殿(瀬名)の死後に家康の子供と認知されましたが、これは、秀康の母親が築山殿から家康の妾として承認されなかったからで、この経緯が江戸時代前期には築山殿の「嫉妬」のためと矮小化されていきます(関連記事)。本作はこうした人間関係について近年の研究成果を取り…
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『卑弥呼』第108話「ふたつの密議」

 『ビッグコミックオリジナル』2023年6月5日号掲載分の感想です。前回は、ミマアキがヤノハに、中原で覇権を握る国に使者を送るよう、提言したところで終了しました。今回は、その5ヶ月前、暈(クマ)の国の夜萬加(ヤマカ)にて、チカラオ(ナツハ)が志能備(シノビ)犬に捕らえた兎を与えている場面から始まります。夜萬加に住むホデリとタマヨリという…
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中国北東部におけるマンジュ人と朝鮮人の遺伝的構造および混合

 中国北東部におけるマンジュ(満洲)人と朝鮮人の遺伝的構造および混合に関する研究(Sun et al., 2023)が公表されました。本論文は、現在中国北東部に暮らす少数民族であるマンジュ人と朝鮮人の遺伝的構造および混合の分析結果を報告しています。民族は遺伝的特徴により定義されるわけではありませんが、民族集団間の明確な遺伝的差異が多くの…
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寺西貞弘『天武天皇』

 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2023年5月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、天武天皇(大海人皇子)の生涯、および皇親政治と律令制導入の実態を主題とします。天武天皇の生涯については、その前半生に不明な点が多く、年齢も定かではないこと(ただ、『日本書紀』において「天皇」の年齢が不明なのは珍しくなく、とくに『日本書紀』…
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中国で発見されたデニソワ人かもしれない人類化石

 種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)について記事をまとめて(関連記事)から4年近く経過し、まとめ記事を更新しよう、とここ1~2年はずっと考えてきましたが、当ブログで取り上げただけでもデニソワ人関連の研究はそれなりにあり、整理するのが大変なので、手をつけていません。そこで、まず簡潔にまとまっているオーストラリア博物館…
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足の構造から推測される初期獣脚類恐竜の生活様式

 足の構造から初期獣脚類恐竜の生活様式を推測した研究(Pittman et al., 2022)が公表されました。獣脚類は3本指の恐竜の分類群で、ティラノサウルス・レックスやヴェロキラプトルや鳥類が含まれます。現生鳥類の足の形状と大きさは、跳躍、止まり木への着地、浅い水中を歩いて渡ること、遊泳、木登り、把持、摂食様式などの能力に対応する…
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メキシコの先スペイン期遺跡個体の遺伝的データ

 メキシコの先スペイン期遺跡で発見された人類遺骸の核ゲノムデータとミトコンドリアDNA(mtDNA)データを報告した研究(Villa-Islas et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。古代DNAはヒト集団の移動と遺伝的遺産について多くを明らかにしてきました。しかし、DNAは暑い気候ではひじょうに分解しや…
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ハインリッヒイベント型の気候変動の両極への影響

 ハインリッヒイベント(Heinrich Event、略してHE)型の気候変動の両極への影響エピに関する研究(Martin et al., 2023)が公表されました。HEは人類の進化において重要な影響を及ぼした、と考えられています(関連記事)。最終氷期の間、ローレンタイド(Laurentide)氷床では極端な氷山の放出事象が起き、これ…
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大河ドラマ『どうする家康』第18回「真・三方ヶ原合戦」

 今回は三方ヶ原合戦の詳細が回想で描かれました。今回からオープニングの背景が変わり、初回視聴時に、「背景の映像でクレジットが見えづらいこともあり、正直なところ改善してもらいたいものです」と述べましたが(関連記事)、これまでよりも見やすくなり、私のようにこの点で不満を抱いた視聴者から苦情が寄せられたため、改善されたのでしょうか。三方ヶ原合…
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ヒトパンゲノムの概要参照配列

 ヒトパンゲノムの概要参照配列に関する三つの研究の研究が公表されました。この参照配列は、さまざまなヒトのDNAの塩基配列をできるだけ多く集めることが目標とされています。この一連の研究は、遺伝的に多様な被験者(合計47人)から採取した遺伝物質に基づいており、ヒトゲノムの全容解明に一歩近づきました。これまで現代人の遺伝学的研究は、地域単位で…
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石濱裕美子『物語チベットの歴史 天空の仏教国の1400年』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2023年4月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書はまず、チベット高原の地理を説明していますが、その平均標高は4100mで、改めてチベット高原の険しさを思い知らされます。ただ、本書が指摘するように、チベット高原は東方に行くほど低くなるので、東部では農耕も行なわれており、チベットの人口の大半…
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アフリカ東部における中新世の生態系と類人猿の見直し

 アフリカ東部における中新世の生態系と類人猿に関する二つの研究が公表されました。日本語の解説記事もあります。一方の研究(Peppe et al., 2023)は、アフリカ東部におけるC4型の草の従来の想定よりも早い出現を指摘しています。アフリカの象徴的なC4型炭素固定経路で光合成を行なう草の生態系の構築は、人類を含む多くの哺乳類系統の進…
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ミトコンドリアDNAに基づく更新世におけるアメリカ大陸と日本列島への沿岸経路での人類の拡散

 ミトコンドリアDNA(mtDNA)に基づいて更新世におけるアメリカ大陸と日本列島への沿岸経路での人類の拡散を推測した研究(Li et al., 2023)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。現代人と古代人のmtDNAに基づいて、更新世における沿岸経路でのアメリカ大陸と日本列島への人類の拡散を推測した研究が公…
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潜水する捕食恐竜の新種

 潜水する捕食恐竜の新種を報告した研究(Lee et al., 2022)が報道されました。この研究は、モンゴルのウムヌゴビ県で出土した化石標本に含まれる遺骸化石を調べて、新種を特定し、ナトベナトル・ポリドントゥス(Natovenator polydontus)と命名しました。この名称は、「多くの歯を持ち、遊泳する狩猟者」という意味です…
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ピクト人のゲノムデータ

 ピクト人のゲノムデータを報告した研究(Morez et al., 2023)が公表されました。本論文は、中世初期スコットランド(300~900年頃)のピクト期と関連する個体群がから配列決定された、2点の高品質の常染色体ゲノムと8点のミトコンドリアゲノムを報告します。本論文は、ピクト人のゲノムとブリテン島に暮らしていた鉄器時代の人々との…
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大河ドラマ『どうする家康』第17回「三方ヶ原合戦」

 今回は三方ヶ原合戦が描かれましたが、徳川家康と織田信長の交渉と関係、家康が今生の別れになると覚悟して瀬名に会ったことも含めて、三方ヶ原合戦へと至る過程こそ詳しかったものの、あっさりと三方ヶ原合戦での徳川軍の大敗まで進み、詳細は次回の「真・三方ヶ原合戦」にて回想で語られるようです。井伊虎松(直政)をこの徳川と武田の戦いにおける遠江の傍観…
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ヨーロッパへの初期現生人類の3回の主要な拡散

 石器技術の比較から更新世における現生人類(Homo sapiens)のレヴァントからヨーロッパへの3回の主要な拡散を推測した研究(Slimak., 2023)が公表されました。ヨーロッパにおけるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の絶滅と現生人類の拡散には高い関心が寄せられており、長きにわたる議論があります…
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Caroline Fourest『「傷つきました」戦争 超過敏世代のデスロード』

 カロリーヌ・フレスト(Caroline Fourest)著、堀茂樹訳で、中央公論新社より2023年3月に刊行されました。原書の刊行は2020年です。電子書籍での購入です。本書は、左派の立場からの近年の「道徳主義的でアイデンティティ至上主義的な特定の左派」への批判です。かつては階級が問題となったのに、今では「人種」などの出自や帰属意識が…
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上部旧石器時代のペンダントから得られた古代人のDNA(追記有)

 上部旧石器時代のペンダントから得られた古代人のDNAを報告した研究(Essel et al., 2023)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。堆積物など非動物遺骸から古代DNAを解析する手法は近年急速に発展していますが、本論文は、人工遺物からの非破壊的な手法での古代DNA解析の手法を提示しており、たいへん注…
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アラスカ南東部の3000年前頃の女性個体のゲノムデータ

 アラスカ南東部の3000年前頃の女性個体のゲノムデータを報告した研究(Aqil et al., 2023)が公表されました。アメリカ大陸についても人類集団の古代ゲノム研究は盛んで、さまざまなことが解明されつつあります(関連記事)。最近では、過去5000年間のアジア北東部とアメリカ大陸の人類集団間の遺伝的つながりも示唆されています(関連…
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『卑弥呼』第107話「倭の未来」

 『ビッグコミックオリジナル』2023年5月20日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハがヌカデに、田油津日女(タブラツヒメ)と名乗って暈(クマ)国に潜入して捕らわれたアカメを救出するよう、懇願するところで終了しました。今回は、夢を見ていたヤノハの前にモモソの霊が現れる場面から始まります。モモソはヤノハに、夢で息子(ヤエト)や弟のチカラオ(…
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大河ドラマ『どうする家康』第16回「信玄を怒らせるな!」

 今回は徳川と武田との対立の激化が描かれました。武田信玄の調略により徳川領が切り崩されていき、脅威に思った徳川家康は上杉謙信と提携しようとしますが、信玄に悟られ、信玄は各地に家康非難の書状を送ります。ただ、家康はこれによって信玄が怒ったというよりも、信玄は当初から遠江侵攻を考えており、口実に使っただけで、遠江への侵攻時期を窺っているだけ…
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古人類学の記事のまとめ(49)2023年1月~2023年4月

 2023年1月~2023年4月のこのブログの古人類学関連の記事を以下に整理しておきます。なお、過去のまとめについては、2023年1月~2023年4月の古人類学関連の記事の後に一括して記載します。私以外の人には役立たないまとめでしょうが、当ブログは不特定多数の読者がいるという前提のもとに執筆しているとはいえ、基本的には備忘録的なものです…
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