コーカサス南部の人口史

 コーカサス南部の新石器時代3個体の新たなゲノムデータを報告した研究(Guarino-Vignon et al., 2023)が公表されました。本論文は、コーカサス南部に位置するアゼルバイジャンのメンテシュ・テペ(Mentesh Tepe)遺跡の、新石器時代となるショムテペ・シュラヴェリ文化(Shomutepe-Shulaveri cu…
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島嶼化による人為的絶滅への影響

 島嶼化による人為的絶滅への影響に関する研究(Rozzi et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。島嶼は地球表面のわずか7%足しか占めていませんが、地理的に孤立しているため、特徴的な進化史に伴う多様性が見られます。島嶼環境における重要な進化的形態である島嶼化は、きょくたんな小型分類群や大型分類群のような形…
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非アフリカ系現代人のX染色体における強い選択

 非アフリカ系現代人のX染色体における強い選択に関する研究(Skov et al., 2023)が公表されました。本論文は、非アフリカ系現代人の祖先集団において、選択的一掃のようなX染色体上で強い選択があったことを、現時点で最古級となるゲノムが解析された現生人類(Homo sapiens)遺骸も用いて明らかにしており、ネアンデルタール人…
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大河ドラマ『どうする家康』第12回「氏真」

 今回は今川家の没落が描かれました。今川氏真は、本作と同じく徳川家康を主人公とする1983年放送の大河ドラマ『徳川家康』よりも本作の方が目立っているように思われ、家康の氏真への複雑な想いも描かれたことから、氏真は家康の晩年まで今後もたびたび登場するのではないか、と予想しています。その意味で、氏真の没落がどのように描かれるのか、注目してい…
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大相撲春場所千秋楽

 今場所も横綱の照ノ富士関が全休となり、これで休場は4場所連続、全休は3場所連続となります。照ノ富士関がもう横綱昇進前後の強さを取り戻すことは難しいでしょうし、復帰しても横綱に相応しい成績を残せるのか不明で、正直なところ、このまま復帰できずに引退するのではないか、と懸念されます。横綱を長く務められないだろう、と照ノ富士関自身も横綱昇進当…
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新石器時代ヨーロッパの農耕民における狩猟採集民との混合による選択の促進

 新石器時代ヨーロッパの農耕民における選択についての研究(Davy et al., 2023)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。ヨーロッパは古代人のゲノム研究が最も進んでいる地域で(関連記事)、先史時代からの選択の経時的過程を古代ゲノムデータで直接的に詳しく観測できます。最近ではヨーロッパの上部旧石器時代~…
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黒田基樹『お市の方の生涯 「天下一の美人」と娘たちの知られざる政治権力の実像』

 朝日新書の一冊として、朝日新聞社より2023年1月に刊行されました。電子書籍での購入です。徳川家康を主人公とする今年(2023年)の大河ドラマ『どうする家康』でも恐らくは重要人物として登場しているだろうお市の方について、正直なところさほど関心が高かったわけではありませんが、私にとって著者は、西洋史の本村凌二氏および東洋史の岡本隆司氏と…
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ペルーのアシャニンカ人の遺伝的歴史

 ペルーのアシャニンカ人のゲノムデータを報告した研究(Capodiferro et al., 2023)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、アンデス地域とアマゾン川の源流との間に位置するアマゾニアにおいて、ペルーに暮らす先住民であるアシャニンカ人(Ashaninka)のゲノムデータを報告しています。…
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『ウイニングポスト10』体験版

 『ウイニングポスト』シリーズで年度版ではなく完全新作となる『ウイニングポスト10』が今月(2023年3月)発売されることは当ブログで以前取り上げましたが(関連記事)、間もなく(3月30日)発売となります。その記事でも述べたように、私は長年の『ウイニングポスト』シリーズ信者で、初代からPC版をずっと購入し続けていましたが、『ウイニングポ…
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過去5100年間のチベット高原の人口史

 チベット高原で発見された過去5100年間の人類遺骸のゲノムデータを報告した研究(Wang et al., 2023)が公表されました。チベット高原の人類史(関連記事)は、その高地適応や、現生人類(Homo sapiens)だけではなく種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)の存在も確認されていることや、日本列島やアンダ…
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『卑弥呼』第104話「無類の軍師」

 『ビッグコミックオリジナル』2023年4月5日号掲載分の感想です。前回は、筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)連合軍が、ヤノハの策により、金砂(カナスナ)国の青谷(アオタニ)邑(現在の鳥取市青谷町でしょうか)を襲撃した日下(ヒノモト)連合軍の指揮官であるワカタケ王子(稚武彦命、つまり記紀のワカタケヒコノミコトでしょうか)だけ…
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大河ドラマ『どうする家康』第11回「信玄との密約」

 今回は、東海道における永禄年間後半の諸大名の争いが描かれました。松平家康は名字(苗字)を徳川と改めますが、三河に存在する他の有力な松平家とは別格の存在であることを示そうとしたのかな、とも思います。武田家ではこの時点で家康は織田信長の家臣と考えられていることが示されていましたが、じっさいに武田信玄は家康を信長の家臣と考えていたようで、家…
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イラン東部における更新世人類の痕跡

 イラン東部における更新世人類の痕跡の予備的調査結果を報告した研究(Sadraei et al., 2023)が公表されました。イランは現生人類(Homo sapiens)の人類の拡散において重要な役割を果たしてきたと考えられますが(関連記事)、それは非現生人類ホモ属でも同様だったかもしれません。最近では、イラン南部の更新世人類の証拠に…
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須田努『幕末社会』

 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2022年1月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書はまず、幕末社会の前提として、江戸時代の社会を通時的に概観します。本書は江戸時代の政治理念として、仁政(百姓に重い税を課す代償として、百姓の生命と家の相続の保障)と武威(武士は強大な武力を独占するも、民に直接的に行使せず、畏怖させて支配…
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カンブリア紀の化石の見直し

 カンブリア紀の化石の見直しを報告した研究(Yang et al., 2023)が公表されました。多様な動物門とそれらに関連するボディープランは、5億年以上前のカンブリア紀に起こった単一の爆発的進化事象に端を発しています。群体性の「苔動物」である苔虫動物(コケに似た水生無脊椎動物)門はその例外であり、この生体鉱物化するクレード(単系統群…
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ミラノにおける過去2000年間のヒトの身長の推移

 イタリアのミラノにおける過去2000年間のヒトの身長の推移を報告した研究(Biehler-Gomez et al., 2023)が公表されました。身長は、遺伝的要素と環境的要素の相互作用により直接決定される生物学的形質で、ヒトも同様です。そのため身長は、骨格の生物学的特性や過去の健康状態や人口集団の社会動態を復元するための指標として評…
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脊椎動物における生殖細胞系列の変異率の違い

 脊椎動物における生殖細胞系列の変異率の違いを報告した研究(Bergeron et al., 2023)が公表されました。生殖細胞系列の変異率は、ゲノム進化の速度を決定する一方で、それ自体が進化する媒介変数でもあります。しかし、変異率に関するこれまでの研究の大半は異なる方法論で単一の種に焦点を合わせたものだったので、その進化が何によって…
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ヨーロッパにおけるネアンデルタール人と現生人類の関係

 21世紀初頭時点でのヨーロッパにおけるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)との関係は、55000年前頃以降にアフリカからユーラシアへと拡散した現生人類がその後ある程度経た後にヨーロッパにも侵出し、ネアンデルタール人は現生人類との1万~2万年間程度の最低限の混合を伴うかま…
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大河ドラマ『どうする家康』第10回「側室をどうする!」

 今回は本多忠勝も榊原康政も石川数正も登場せず、ほぼ松平(徳川)家康の家庭事情が描かれました。喜劇調でしたが、外してしまった感は否めないというか、かなり賛否が分かれそうな演出だったので、さらに視聴率が低下するのではないか、と懸念されます。当時、大名も含めて領主の正妻あるいは「家」妻(家康にとってこの時点では瀬名)の家政への権限は強く、側…
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山本健『ヨーロッパ冷戦史』

 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2021年4月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、より広範な地域を対象とした冷戦史研究が進展した結果、冷戦史研究において冷戦の「主戦場」でもあったヨーロッパの相対的地位が低下し、蓄積されたヨーロッパに関する冷戦史研究の成果の多くが充分には活かされていない、との認識から、冷戦下のヨーロッパ…
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ブドウの栽培化と進化史

 ブドウの栽培化と進化史に関する研究(Dong et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。人類は栽培化と家畜化により周囲の生物を広範に変化させてきました。ブドウは現代人にとって身近な栽培化された植物であるため関心が高いようで、フランスの鉄器時代から中世までの種子のゲノム解析(関連記事)や、ヨーロッパの葡萄酒…
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イラン南部の更新世人類の証拠

 イラン南部の更新世人類の新たな証拠を報告した研究(Anjomrooz et al., 2022)が公表されました。イラン南部では、旧石器時代の人類居住の体系的調査はほとんど行なわれてきませんでした。本論文は、ホルムズ海峡の北側間地域の体系的な旧石器時代調査の最初の報告を提示し、下部旧石器時代以来の、この地域における人類の存在について、…
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現代人の高品質なゲノムデータから推測されるアフリカの複雑な人口史

 アフリカの広範な地域の現代人の高品質なゲノムデータを報告した研究(Fan et al., 2023)が公表されました。現生人類(Homo sapiens)の起源地であるアフリカは、最も現代人の遺伝的多様性が高い地域です。現代人の遺伝学的研究は、地域単位での比較では、ヨーロッパおよび北アメリカ大陸が最も進んでおり、それが現代人の遺伝的多…
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イベリア半島南部の上部旧石器時代個体のゲノムデータ

 イベリア半島南部の上部旧石器時代個体のゲノムデータを報告した研究(Villalba-Mouco et al., 2023)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、昨年(2022年)開催された人間進化研究ヨーロッパ協会第12回総会で、すでに概要が公表されていました(関連記事)。この研究は、ヨーロッパの…
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大河ドラマ『どうする家康』第9回「守るべきもの」

 今回は、三河一向一揆で家臣の離反が相次ぎ、苦戦に陥って疑心暗鬼となった松平(徳川)家康がいかにこの難局を乗り切るのか、注目されました。家臣団も苦戦で疲弊し、家中が分裂しそうな中で、家康に諫言したのは老臣の鳥居忠吉でした。主君が家臣を信じなければ、家臣は主君を信じない、というわけです。これで開き直った家康は家臣とともに出撃し、状況は次第…
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『卑弥呼』第103話「ならわし」

 『ビッグコミックオリジナル』2023年3月20日号掲載分の感想です。前回は、金砂(カナスナ)国の青谷(アオタニ)邑(現在の鳥取市青谷町でしょうか)にて、山社(ヤマト)を盟主とする筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)連合軍と、日下(ヒノモト)連合軍との直接的な衝突がついに始まり、フトニ王(大日本根子彦太瓊天皇、つまり記紀の第7…
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高橋のぼる『劉邦』第15集(小学館)

 電子書籍での購入です。第15集は、従う兵士が残り百人ほどとなり、圧倒的に優勢な漢軍相手に討ち死にしようと考えた項羽が、愛馬の騅とともに烏江へとわずか26人で出撃した、との報告を劉邦が女性と戯れながら受けている場面から始まります。項羽は投降するよう促す韓信を投げ捨て、必死に戦いつつ逃げますが、愛馬の騅が矢で射られて長くないのを見て、墓穴…
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上部旧石器時代から新石器時代のヨーロッパ狩猟採集民の大規模なゲノムデータ(追記有)

 上部旧石器時代から新石器時代のヨーロッパ狩猟採集民の大規模なゲノムデータを報告した研究(Posth et al., 2023)が公表されました。この研究は、ヨーロッパ全域の狩猟採集民116個体の新たな古代ゲノムデータを報告し、これまで不明なところが多分に残っていた最終氷期極大期(Last Glacial Maximum、略してLGM)…
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絶滅鳥類の卵殻から得られたミトコンドリアDNA

 絶滅鳥類の卵殻から抽出したミトコンドリアDNA(mtDNA)の解析結果を報告した研究(Grealy et al., 2023)が公表されました。マダガスカル島の絶滅鳥類であるゾウドリについては、化石記録における大きな間隙と骨格標本の生体分子保存性の低さから、その系統分類には依然として議論の余地があります。ゾウドリは空を飛べない大型鳥類…
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ヒッタイトの崩壊と旱魃

 ヒッタイトの崩壊と旱魃に関する研究(Manning et al., 2023)が報道されました。気候変動が人類史を大きく変化させる可能性は差し迫った関心事ですが、異なる種類の気候変動がもたらす具体的な影響についてはまだ不明です。この疑問には、古気候や考古学のデータを用いて取り組むことができます。たとえば、紀元前1200年頃の気候条件の…
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