島嶼化による人為的絶滅への影響に関する研究(Rozzi et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。島嶼は地球表面のわずか7%足しか占めていませんが、地理的に孤立しているため、特徴的な進化史に伴う多様性が見られます。島嶼環境における重要な進化的形態である島嶼化は、きょくたんな小型分類群や大型分類群のような形…
非アフリカ系現代人のX染色体における強い選択に関する研究(Skov et al., 2023)が公表されました。本論文は、非アフリカ系現代人の祖先集団において、選択的一掃のようなX染色体上で強い選択があったことを、現時点で最古級となるゲノムが解析された現生人類(Homo sapiens)遺骸も用いて明らかにしており、ネアンデルタール人…
新石器時代ヨーロッパの農耕民における選択についての研究(Davy et al., 2023)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。ヨーロッパは古代人のゲノム研究が最も進んでいる地域で(関連記事)、先史時代からの選択の経時的過程を古代ゲノムデータで直接的に詳しく観測できます。最近ではヨーロッパの上部旧石器時代~…
ペルーのアシャニンカ人のゲノムデータを報告した研究(Capodiferro et al., 2023)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、アンデス地域とアマゾン川の源流との間に位置するアマゾニアにおいて、ペルーに暮らす先住民であるアシャニンカ人(Ashaninka)のゲノムデータを報告しています。…
チベット高原で発見された過去5100年間の人類遺骸のゲノムデータを報告した研究(Wang et al., 2023)が公表されました。チベット高原の人類史(関連記事)は、その高地適応や、現生人類(Homo sapiens)だけではなく種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)の存在も確認されていることや、日本列島やアンダ…
イラン東部における更新世人類の痕跡の予備的調査結果を報告した研究(Sadraei et al., 2023)が公表されました。イランは現生人類(Homo sapiens)の人類の拡散において重要な役割を果たしてきたと考えられますが(関連記事)、それは非現生人類ホモ属でも同様だったかもしれません。最近では、イラン南部の更新世人類の証拠に…
カンブリア紀の化石の見直しを報告した研究(Yang et al., 2023)が公表されました。多様な動物門とそれらに関連するボディープランは、5億年以上前のカンブリア紀に起こった単一の爆発的進化事象に端を発しています。群体性の「苔動物」である苔虫動物(コケに似た水生無脊椎動物)門はその例外であり、この生体鉱物化するクレード(単系統群…
イタリアのミラノにおける過去2000年間のヒトの身長の推移を報告した研究(Biehler-Gomez et al., 2023)が公表されました。身長は、遺伝的要素と環境的要素の相互作用により直接決定される生物学的形質で、ヒトも同様です。そのため身長は、骨格の生物学的特性や過去の健康状態や人口集団の社会動態を復元するための指標として評…
脊椎動物における生殖細胞系列の変異率の違いを報告した研究(Bergeron et al., 2023)が公表されました。生殖細胞系列の変異率は、ゲノム進化の速度を決定する一方で、それ自体が進化する媒介変数でもあります。しかし、変異率に関するこれまでの研究の大半は異なる方法論で単一の種に焦点を合わせたものだったので、その進化が何によって…
古代ゲノム研究に基づく完新世における人類の拡散に関する概説(Stoneking et al., 2023)が公表されました。本論文は、『米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、略してPNAS)…
ブドウの栽培化と進化史に関する研究(Dong et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。人類は栽培化と家畜化により周囲の生物を広範に変化させてきました。ブドウは現代人にとって身近な栽培化された植物であるため関心が高いようで、フランスの鉄器時代から中世までの種子のゲノム解析(関連記事)や、ヨーロッパの葡萄酒…
イラン南部の更新世人類の新たな証拠を報告した研究(Anjomrooz et al., 2022)が公表されました。イラン南部では、旧石器時代の人類居住の体系的調査はほとんど行なわれてきませんでした。本論文は、ホルムズ海峡の北側間地域の体系的な旧石器時代調査の最初の報告を提示し、下部旧石器時代以来の、この地域における人類の存在について、…
アフリカの広範な地域の現代人の高品質なゲノムデータを報告した研究(Fan et al., 2023)が公表されました。現生人類(Homo sapiens)の起源地であるアフリカは、最も現代人の遺伝的多様性が高い地域です。現代人の遺伝学的研究は、地域単位での比較では、ヨーロッパおよび北アメリカ大陸が最も進んでおり、それが現代人の遺伝的多…
イベリア半島南部の上部旧石器時代個体のゲノムデータを報告した研究(Villalba-Mouco et al., 2023)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、昨年(2022年)開催された人間進化研究ヨーロッパ協会第12回総会で、すでに概要が公表されていました(関連記事)。この研究は、ヨーロッパの…
絶滅鳥類の卵殻から抽出したミトコンドリアDNA(mtDNA)の解析結果を報告した研究(Grealy et al., 2023)が公表されました。マダガスカル島の絶滅鳥類であるゾウドリについては、化石記録における大きな間隙と骨格標本の生体分子保存性の低さから、その系統分類には依然として議論の余地があります。ゾウドリは空を飛べない大型鳥類…
ヒッタイトの崩壊と旱魃に関する研究(Manning et al., 2023)が報道されました。気候変動が人類史を大きく変化させる可能性は差し迫った関心事ですが、異なる種類の気候変動がもたらす具体的な影響についてはまだ不明です。この疑問には、古気候や考古学のデータを用いて取り組むことができます。たとえば、紀元前1200年頃の気候条件の…