取り上げるのが遅れてしまいましたが、愛知県の縄文文化遺跡の人類遺骸のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析結果を報告した研究(Waku et al., 2022)が公表されました。渥美半島に位置する愛知県田原市の伊川津貝塚遺跡の人骨(IK002)では核DNAの解析が成功しており(関連記事)、現代日本人の遺伝的構成の地域差に関する研究(…
中国北西部の青銅器時代遺跡に関する学際的研究(Ren et al., 2023)が公表されました。本論文は、まだ予備的段階ですが、中華人民共和国甘粛省甘南チベット族自治州臨潭(Lintan)県磨溝(Mogou)遺跡の学際的研究の成果を報告しています。考古学や遺伝学などを統合した学際的研究は、古代DNA研究の進展したヨーロッパでとくに進…
フランス地中海地域におけるヨーロッパ最古となる弓矢技術を報告した研究(Metz et al., 2023)が公表されました。フランス地中海地域のマンドリン洞窟(Grotte Mandrin)では、54000年前頃と推定されている現生人類と分類されている歯が発見されています(関連記事)。しかし、その後のヨーロッパの人類化石と考古学と遺伝…
3億1900万年前頃の条鰭類魚類の化石化した脳を報告した研究(Figueroa et al., 2023)が公表されました。脳の構造からは、条鰭類魚類の系統間の類縁関係に関して重要な証拠が得られますが、二つの大きな限界のため、この主要な脊椎動物群の神経解剖学的進化の理解が不明瞭になっています。一方は、最初期に分岐した現生系統がそれらの…
現代日本人の遺伝的構成の地域差に関する研究(Watanabe, and Ohashi., 2023)が公表されました。日本人起源論への関心は現代日本社会においてそれなりに高いように思われ、関連する研究が注目されることもあります。そうした関心のある人々の間では、現代日本人の遺伝的構成に地域差があることもよく知られているでしょう。本論文は…
最古のアシナシイモリ類化石を報告した研究(Kligman et al., 2023)が公表されました。現生の両生類(平滑両生類)は、カエル類(無尾類)とサンショウウオ類(有尾類)から構成されるBatrachia(無尾・有尾類)と、肢がなく蠕虫に似たアシナシイモリ類(無足類)が含まれます。無足類と無尾・有尾類の分岐年代は分子的には古生代…
古代エジプトの遺体防腐処置に関する研究(Rageot et al., 2023)が公表されました。古代エジプト人の防腐処理によって死体を保存する能力は、古代から人々を魅了してきただけでなく、このきわめて優れた化学的・儀式的処理が実際にどのように達成されたのか、という疑問を絶えず提起してきました。古代エジプトのミイラ製作は長期間を要する…
海面変化からアジア南部および南東部の先史時代の人類の移動を推測した研究(Kim et al., 2023)が公表されました。本論文は、遺伝学的データと古地理学的データを統合し、海面変化が先史時代のアジア南部および南東部の人口集団の移動と分岐をもたらしたのではないか、と推測しています。先史時代の更新世の寒冷期には、ジャワ島やスマトラ島や…
最古となるオルドワン(Oldowan)石器を報告した研究(Plummer et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。本論文は、現時点では最古となりそうなオルドワン石器と屠殺の痕跡を報告している点でもひじょうに意義深いと思いますが、石器を製作したのがパラントロプス属である可能性を指摘している点でもたいへん注…
古代ゲノム研究に基づく中国の先史時代の概説(Gao, and Cui., 2023)が公表されました。本論文は、おもに現在の中華人民共和国の領土(中国)を対象として、近年の古代ゲノム研究を再検討します。ユーラシア西部、とくにヨーロッパと比較して、中国も含めてアジア東部の古代ゲノム研究が遅れていたことは否定できません(Liu et al…
海洋酸素同位体ステージ(MIS)3におけるチベット高原への人類と石刃技術の拡散に関する概説(Zhang et al., 2023)が公表されました。チベット高原への人類の拡散は古く、本論文では最近の公表のため取り上げる時間的余裕がなかったためか、言及されていない研究では、中期更新世となる226000~169000年前頃の人類の手と足の…
哺乳類の社会組織と寿命との相関について研究(Zhu et al., 2023)が公表されました。社会性と寿命の関係の解明は、動物の生活史がどのように進化してきたのか、より深い理解を可能にします。哺乳類の社会組織は多岐にわたり、単独生活、つがい生活、さまざまな形態の集団生活が観察されています。また、哺乳類の最長寿命は、トガリネズミの約2…
概日遺伝子発現の性別と年齢による違いを報告した研究(Talamanca et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。概日時計はヒトの生理機能を調節し、ヒトの生物学的性質の多くの側面を日々の環境および社会的手がかりと同期させています。しかし、遺伝子発現の周期変動的な概日変化はモデル生物ではよく報告されているも…
クジラの巨大化をもたらした遺伝子に関する研究(Silva et al., 2023)が公表されました。クジラとイルカとネズミイルカにより構成されるクジラ類は約5000万年前に祖先の小型陸生動物から進化し、シロナガスクジラやナガスクジラなどの巨大な代表種を含む、生物の中で最大級とされる水生哺乳類群です。しかし、巨大化は生物学的な不利益(…