愛知県の縄文文化遺跡の人類遺骸のミトコンドリアDNA

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、愛知県の縄文文化遺跡の人類遺骸のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析結果を報告した研究(Waku et al., 2022)が公表されました。渥美半島に位置する愛知県田原市の伊川津貝塚遺跡の人骨(IK002)では核DNAの解析が成功しており(関連記事)、現代日本人の遺伝的構成の地域差に関する研究(…
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大河ドラマ『どうする家康』第8回「三河一向一揆でどうする!」

 今回は、徳川(松平)家康にとって生涯でも有数の危機だったと思われる三河一向一揆の勃発が描かれました。前回、三河一向一揆へと至る過程と三河の真宗(一向一揆)寺院の内情が描かれていたので、三河一向一揆への展開にも説得力があったように思います。同じく家康を主人公とする1983年の大河ドラマ『徳川家康』では、三河一向一揆はあっさりとした描写だ…
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中国北西部の青銅器時代遺跡の学際的研究

 中国北西部の青銅器時代遺跡に関する学際的研究(Ren et al., 2023)が公表されました。本論文は、まだ予備的段階ですが、中華人民共和国甘粛省甘南チベット族自治州臨潭(Lintan)県磨溝(Mogou)遺跡の学際的研究の成果を報告しています。考古学や遺伝学などを統合した学際的研究は、古代DNA研究の進展したヨーロッパでとくに進…
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橋場弦『古代ギリシアの民主政』

 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2022年9月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は古代ギリシアの民主政を、後世に美化されたり誹謗されたりした図式ではなく、当時の文脈で読み解こうとします。対象となるのはおもにアテナイですが、広く古代ギリシア世界全体が取り上げられています。アテナイ以外にも民主政のポリスはあった、という…
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フランス地中海地域におけるヨーロッパ最古となる弓矢技術

 フランス地中海地域におけるヨーロッパ最古となる弓矢技術を報告した研究(Metz et al., 2023)が公表されました。フランス地中海地域のマンドリン洞窟(Grotte Mandrin)では、54000年前頃と推定されている現生人類と分類されている歯が発見されています(関連記事)。しかし、その後のヨーロッパの人類化石と考古学と遺伝…
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3億1900万年前頃の条鰭類魚類の化石化した脳

 3億1900万年前頃の条鰭類魚類の化石化した脳を報告した研究(Figueroa et al., 2023)が公表されました。脳の構造からは、条鰭類魚類の系統間の類縁関係に関して重要な証拠が得られますが、二つの大きな限界のため、この主要な脊椎動物群の神経解剖学的進化の理解が不明瞭になっています。一方は、最初期に分岐した現生系統がそれらの…
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ニホンオオカミの遺伝的歴史

 ニホンオオカミ(Canis lupus hodophilax)の遺伝的歴史に関する概説(寺井., 2023)が公表されました。イヌ(Canis lupus familiaris)は恐らくヒトにとって最古の家畜であり、しかもその家畜化の年代は他の動物よりずっと古そうなことから、古代DNA研究も含めてイヌの遺伝学的研究は盛んで、当ブログで…
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『卑弥呼』第102話「囮」

 『ビッグコミックオリジナル』2023年3月5日号掲載分の感想です。前号では作画者の中村真理子氏が急病のため休載となり、案じられましたが、今号では無事掲載されていました。前回は、金砂(カナスナ)国の青谷(アオタニ)邑(現在の鳥取市青谷町でしょうか)にて、日下(ヒノモト)のフトニ王(大日本根子彦太瓊天皇、つまり記紀の第7代孝霊天皇でしょう…
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大河ドラマ『どうする家康』第7回「わしの家」

 今回は三河一向一揆へと至る過程が描かれました。同じく徳川家康(松平元康)を主人公とする大河ドラマである1983年放送の『徳川家康』では、三河一向一揆はあっさりとした描写だったように記憶していますが、本作ではやや詳しく描かれるようです。家康はまだ三河を平定できておらず、今川との対立関係も続いており、戦費が嵩んで松平(徳川)家の財政は苦し…
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現代日本人の遺伝的構成の地域差(追記有)

 現代日本人の遺伝的構成の地域差に関する研究(Watanabe, and Ohashi., 2023)が公表されました。日本人起源論への関心は現代日本社会においてそれなりに高いように思われ、関連する研究が注目されることもあります。そうした関心のある人々の間では、現代日本人の遺伝的構成に地域差があることもよく知られているでしょう。本論文は…
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中井謙太『新しいゲノムの教科書 DNAから探る最新・生命科学入門』

 講談社ブルーバックスの一冊として、講談社から2023年1月に刊行されました。進展著しいこの分野の最新の成果に少しでも追いつき、当ブログでよく取り上げている古代ゲノム研究をさらに理解し、理解の曖昧なところを解消するために読みました。新たな知見を得るとともに復習もしよう、というわけです。本書は細胞から説明を始め、復習という観点でも親切な構…
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人類進化史に関する認識の変化

 最近当ブログでは人類の進化、とくに古代ゲノム研究の英語論文を取り上げて日本語に訳すことが多くなり、論文について私見を述べることもありますが、ほぼ翻訳だけになってしまうことが大半なので、たまには独自の文章を掲載しようと考えたものの、いざ執筆しようとすると、さて何を題材にすべきか、と迷ってしまった次第です。人類の進化について関心のある問題…
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最古のアシナシイモリ類化石

 最古のアシナシイモリ類化石を報告した研究(Kligman et al., 2023)が公表されました。現生の両生類(平滑両生類)は、カエル類(無尾類)とサンショウウオ類(有尾類)から構成されるBatrachia(無尾・有尾類)と、肢がなく蠕虫に似たアシナシイモリ類(無足類)が含まれます。無足類と無尾・有尾類の分岐年代は分子的には古生代…
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古代エジプトの遺体防腐処置

 古代エジプトの遺体防腐処置に関する研究(Rageot et al., 2023)が公表されました。古代エジプト人の防腐処理によって死体を保存する能力は、古代から人々を魅了してきただけでなく、このきわめて優れた化学的・儀式的処理が実際にどのように達成されたのか、という疑問を絶えず提起してきました。古代エジプトのミイラ製作は長期間を要する…
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海面変化から推測されるアジア南部および南東部の先史時代の人類の移動

 海面変化からアジア南部および南東部の先史時代の人類の移動を推測した研究(Kim et al., 2023)が公表されました。本論文は、遺伝学的データと古地理学的データを統合し、海面変化が先史時代のアジア南部および南東部の人口集団の移動と分岐をもたらしたのではないか、と推測しています。先史時代の更新世の寒冷期には、ジャワ島やスマトラ島や…
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大河ドラマ『どうする家康』第6回「続・瀬名奪還作戦」

 今回は、松平元康(徳川家康)による妻子奪還作戦が描かれました。前回、家康は本多正信の策を採用したものの失敗しましたが、今回も正信の策を採用します。今回は、今川重臣の鵜殿長照の息子を捕らえて人質として、妻子と交換する、という策です。松平軍が籠城する鵜殿長照を攻めて自害に追い込み、その息子二人を捕らえるところまでは上手く進み、家康の妻子と…
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最古となるオルドワン石器(追記有)

 最古となるオルドワン(Oldowan)石器を報告した研究(Plummer et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。本論文は、現時点では最古となりそうなオルドワン石器と屠殺の痕跡を報告している点でもひじょうに意義深いと思いますが、石器を製作したのがパラントロプス属である可能性を指摘している点でもたいへん注…
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小峰和夫『満洲 マンチュリアの起源・植民・覇権』

 講談社学術文庫の一冊として、2011年2月に講談社より刊行されました。本書の親本『満洲 起源・植民・覇権』は1991年に御茶の水書房より刊行されました。電子書籍での購入です。本書はまず、満洲の定義が困難であることを指摘します。満洲はダイチン・グルン(大清帝国)において発祥地と考えられており、つまりは後にマンジュ(満洲)と呼ばれるジュシ…
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古代ゲノム研究に基づく中国の先史時代

 古代ゲノム研究に基づく中国の先史時代の概説(Gao, and Cui., 2023)が公表されました。本論文は、おもに現在の中華人民共和国の領土(中国)を対象として、近年の古代ゲノム研究を再検討します。ユーラシア西部、とくにヨーロッパと比較して、中国も含めてアジア東部の古代ゲノム研究が遅れていたことは否定できません(Liu et al…
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MIS3におけるチベット高原への人類と石刃技術の拡散

 海洋酸素同位体ステージ(MIS)3におけるチベット高原への人類と石刃技術の拡散に関する概説(Zhang et al., 2023)が公表されました。チベット高原への人類の拡散は古く、本論文では最近の公表のため取り上げる時間的余裕がなかったためか、言及されていない研究では、中期更新世となる226000~169000年前頃の人類の手と足の…
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哺乳類の社会組織と寿命との相関

 哺乳類の社会組織と寿命との相関について研究(Zhu et al., 2023)が公表されました。社会性と寿命の関係の解明は、動物の生活史がどのように進化してきたのか、より深い理解を可能にします。哺乳類の社会組織は多岐にわたり、単独生活、つがい生活、さまざまな形態の集団生活が観察されています。また、哺乳類の最長寿命は、トガリネズミの約2…
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ネアンデルタール人による草食動物頭蓋の象徴的使用

 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)による草食動物頭蓋の象徴的使用に関する研究(Baquedano et al., 2023)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、スペイン中央部の甲板洞窟(Cueva Des-Cubierta)におけるネアンデルタール人集団の行動の可能…
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大河ドラマ『どうする家康』第5回「瀬名奪還作戦」

 今回は、松平元康(徳川家康)による駿府からの妻子奪還が中心に描かれました。ただ、近年の研究では、桶狭間の戦いの後に家康が岡崎城に入り、今川から明確に離反する1561年(以下、西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)4月の前までに、瀬名(築山殿)は岡崎城に移っていた、との見解が有力なようです(関連記事)。なお、家康の長男の竹千代…
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性別と年齢により異なる概日遺伝子発現

 概日遺伝子発現の性別と年齢による違いを報告した研究(Talamanca et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。概日時計はヒトの生理機能を調節し、ヒトの生物学的性質の多くの側面を日々の環境および社会的手がかりと同期させています。しかし、遺伝子発現の周期変動的な概日変化はモデル生物ではよく報告されているも…
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森正人『「親米」日本の誕生』

 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2018年1月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、第二次世界大戦で敗れた後の日本における対米観とその意味を、おもに生活史と文化史の観点から検証します。戦後日本は、米国への憧憬と現実のアメリカ合衆国の言動への嫌悪および反発を同居させながら、「アメリカ的価値観」を内面化し、アメリカに追いつ…
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『卑弥呼』第12集発売

 待望の第12集が発売されました。第12集には、 口伝87「古の邑」 https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_22.html 口伝88「勝利を得る者」 https://sicambre.seesaa.net/article/202206article_3.htm…
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現生人類の起源をめぐる学説史

 現生人類(Homo sapiens)の起源をめぐる学説史についての概説(Stringer., 2022)が公表されました。現生人類の起源をめぐる学説史については、当ブログで何度か取り上げてきましたが(関連記事1および関連記事2)、一度体系的に学説史についての論文を読もうと考えていたので、現生人類アフリカ単一起源説の代表的な提唱者である…
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クジラの巨大化をもたらした遺伝子

 クジラの巨大化をもたらした遺伝子に関する研究(Silva et al., 2023)が公表されました。クジラとイルカとネズミイルカにより構成されるクジラ類は約5000万年前に祖先の小型陸生動物から進化し、シロナガスクジラやナガスクジラなどの巨大な代表種を含む、生物の中で最大級とされる水生哺乳類群です。しかし、巨大化は生物学的な不利益(…
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