『米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、略してPNAS)』120巻4号では、過去12000年間(ほぼ完新世に相当します)の人類の進化に関する特集が組まれており、複数の論文が掲載されています。…
ナイル川中流域の4000年前頃の人類の毛髪から得られたDNAデータを報告した研究(Wang et al., 2022)が公表されました。錐体骨と歯は、古代DNA抽出のため研究者により最も多く標的とされる骨格要素で、以前に刊行されたアフリカ古代人のゲノムの大半の出所です。しかし、アフリカのほとんどを特徴づける高温環境は、骨格遺骸の保存状…
新石器時代から鉄器時代のエーゲ海地域の古代人のゲノムデータを報告した研究(Skourtanioti et al., 2023)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。新石器時代と青銅器時代はヨーロッパの遺伝的歴史にとって大きな転換期でしたが、ヨーロッパの先史時代にとって重要な地域であるエーゲ海にとっては、文化的…
フィンランド人のゲノム規模解析と疾患との関連についての二つの研究が公表されました。一方の研究(Kurki et al., 2023)はフィンランド人のゲノム規模解析データを報告しています。フィンランド人集団のような隔離集団は、有害なアレル(対立遺伝子)が少数の低頻度多様体(少数アレル頻度が0.1%以上で5%未満)に集中することが多いた…
過去25万年間の現生人類(Homo sapiens)の世代時間に関する研究(Wang et al., 2023)が公表されました。現代人の最近の祖先の世代時間は、先史時代のヒトの生物学的および社会的組織の両方について語ることができ、ヒトの進化を絶対的な時間規模に位置づけます。本論文は、変異連続体における変化に基づいて、男女の世代時間を…
青銅器時代イベリア半島南部の親族関係に関する研究(Villalba-Mouco et al., 2022)が公表されました。ヨーロッパにおける前期青銅器時代は、紀元前三千年紀初期に始まる社会的および遺伝的変容により特徴づけられます。新たな集落や葬儀構建築物や人工物や技術は、増加する経済的非対称性と政治的階層化を伴う、変化の時代を示唆し…
ジュラ紀のトカゲの頭蓋骨化石に関する研究(Brownstein et al., 2022)が公表されました。有鱗目冠群(トカゲの現生種を含む分類群)の進化初期の化石は、数が少ない上に、通常は保存状態もよくないため、押しつぶされていない最古の骨格材料は、白亜紀(約1億4550万~6550万年前)のものとなっています。ジュラ紀(約2億~1…
鉄器時代から現在のスカンジナビア半島の人類のゲノムデータを報告した研究(Rodríguez-Varela et al., 2023)が公表されました。古代人のゲノムの新たな48点と刊行されている249点、および現代人16638個体の遺伝子型に基づいて、鉄器時代から現在までのスカンジナビア半島の2000年の遺伝的横断区が調べられました。…
飲酒や喫煙に関連する遺伝的構造を報告した研究(Saunders et al., 2022)が公表されました。タバコやアルコールの使用は遺伝性の行動で、それぞれ世界の死亡の15%と5.3%に関連していますが、これはおもに疾患や傷害の危険性が広く上昇するためです。これは環境要因(文化的背景や公衆衛生政策など)の影響を受けることもありますが…
中期完新世にさかのぼるアジア北部古代人のゲノムデータを報告した研究(Wang et al., 2023)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。アジア北部の植民史は、この地域で分析された古代人のゲノム数が限定的であるため、ほとんど調査されていません。本論文は、早ければ7500年前頃と年代測定された、アジア北部、…
反芻動物の内耳から過去3500万年間の進化史を推測した研究(Mennecart et al., 2022)が公表されました。外来因子と内在因子が多様性に影響を与え、深い時間規模では、気候や地質などの外在的な影響が重要ですが、あまり理解されていません。この研究は、反芻動物の内耳形状を用いて、適応性の低い解剖学的構造と外来的および内発的変…
イベリア半島の銅器時代の飾り板に関する研究(Negro et al., 2022)が公表されました。5500~4750年前頃となる銅器時代のイベリア半島南西部では、粘板岩に彫刻を施した飾り板が大量に製作されました(図1)。この掌くらいの大きさの石器は、1世紀以上にわたってその機能が推測されてきましたが、女神を表し、儀式に用いられた、と…
エピジェネティック因子によるマウスの食餌性肥満の継承に関する研究(Hoekzema et al., 2022)が公表されました。妊娠はホルモン状態の大きな変化を伴いますが、それがヒトの神経の構造と機能に及ぼす影響については、ほとんど解明されていません。この研究は、妊娠により引き起こされる脳の変化過程を調べるため、40人の女性を対象とし…
扶南(Funan)期のカンボジアの男児個体におけるアジア南部からの遺伝的影響を報告した研究(Changmai et al., 2022)が公表されました。インドの文化的影響はアジア南東部本土(MSEA)において顕著で、この地域における初期国家の形成を刺激したかもしれません。MSEAにおけるさまざまな現在の人口集団は、低水準のアジア南部…
シチリア島の上部旧石器時代人類のゲノムデータと食性と微生物叢を報告した学際的研究(Scorrano et al., 2022)が公表されました。ヒト遺骸および関連する歯石からの古代生体分子分析における最近の進歩は、現生人類(Homo sapiens)の先史時代の食性および遺伝的多様性への新たな洞察を提供してきました。本論文は複数分野の…
ヨーロッパ中央部の家畜ネコの歴史に関する研究(Krajcarz et al., 2022)が公表されました。ヨーロッパ中央部の最近の研究は、ネコの家畜化の歴史に関する認識を変えてきました。本論文は、地中海を越えての家畜ネコ拡大への洞察を提供する目的で、最近の研究が古遺伝学と動物考古学と放射性炭素年代測定を組み合わせた学際的計画の発展に…
中世ヴォルガ・オカ河間地域における遺伝的混合と言語の変化に関する研究(Peltola et al., 2023)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。ロシア北西部のヴォルガ・オカ(Volga-Oka)河間地域には、紀元後における人口流入と言語変化の興味深い歴史があります。現在、この地域のほとんどの住民はロシア…