ブリテン島の上部旧石器時代後期の2個体の異なる遺伝的構成を報告した研究(Charlton et al., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究はすでに、人間進化研究ヨーロッパ協会第12回総会で概要が報告されていました(関連記事)。上部旧石器時代ヨーロッパの遺伝学的調査は、ヒト集団の移動と複…
初期恐竜の分布を形成した気候帯に関する研究(Griffin et al., 2022)が報道されました。中生代および新生代の陸上生態系を形成することになる脊椎動物の系統は、三畳紀のパンゲア超大陸各地で出現しました。この超大陸において、汎存性の「災害動物相」は、後期三畳紀(カーニアン期、約2億3500万年前)までに固有性の高い集合に取っ…
人間進化研究ヨーロッパ協会第12回総会で、ブリテン島における後期氷期旧石器時代人類の遺伝的構成に関する研究(Charlton et al., 2022)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P24)。以下、年代は暦年代です。近年、多数の研究でユーラシア西部における最初期ヒト集団の一部の遺伝的歴史が調べられ、農耕出…
初期哺乳類の生活史に関する研究(Funston et al., 2022)が公表されました。白亜紀末の大量絶滅後、有胎盤哺乳類は急速に多様化して重要な生態的地位を占め、体サイズを増大させましたが、こうした大型化は他の獣類には当てはまりませんでした。この時期に出現した大型草食動物の中では、汎歯目哺乳類が最初期の分類群として知られています…
三畳紀の爬虫類の新たな分類に関する研究(Foffa et al., 2022)が報道されました。翼竜類は動力飛行(羽ばたき飛行)を進化させた最初の脊椎動物で、後期三畳紀に突然出現してから白亜紀末に姿を消すまで、中生代の陸上生態系を構成する主要な動物群でした。しかし、翼竜類の起源と初期進化については、これらの飛行性爬虫類とそれらに最も近…
メンタルスピード(心的処理の速度)が60歳まで減速しないことを報告した研究(Krause et al., 2022)が公表されました。加齢につれて、環境中の変化(刺激)に反応する時間は長くなるのが一般的です。こうした反応時間は20歳頃から遅くなっていき、加齢につれて徐々に長くなっていく。この研究は、認知課題に対する反応時間を測定するオ…
ヒト脳モデルの改良に関する研究(Revah et al., 2022)が公表されました。自己組織化する神経オルガノイドは、ヒトの発生や疾患のモデルとなり得る有望な生体外(in vitro)構築基盤(プラットフォーム)です。しかし、オルガノイドは生体外に存在するような神経結合を欠くため、成熟に限界があり、行動を制御する他の回路との統合は…
アングロ・サクソン時代におけるヨーロッパ大陸部からブリテン島への大規模な移住に関する研究(Gretzinger et al., 2022)が公表されました。ブリテン諸島の歴史は、ローマ帝国支配の終焉後の重大な変化をはじめとする、文化を大きく変転させた複数の時代によって特徴づけられ、これが、言語や定住パターンや物質文化の移り変わりを促進…
野生チンパンジーの道具使用の社会的学習の可能性を報告した研究(Koops et al., 2022)が公表されました。ヒトは道具使用などの技能を、相互観察により学習します。ヒトの文化は、こうした社会的学習を通して次第に複雑化してきました。しかし、こうした累積的な文化がヒトに特有のものかどうかについては、議論が続いていますい。飼育下の非…
旱魃によるマヤパンの崩壊に関する研究(Kennett et al., 2022)が公表されました。先コロンブス期のメソアメリカでは、降水量が食料生産に及ぼす影響は、人間の移住や人口減少や戦争や政権交代と密接に関連していた可能性がありますが、そのために気候の圧力に直面したさいの回復力や変化や持続可能性がもたらされた可能性もあります。12…
ウズベキスタン東部の天山山脈西部の旧石器を報告した研究(Pavlenok et al., 2022)が公表されました。本論文は、天山山麓西部のチャトカル(Chatkal)における山岳調査の予備的結果を提示します。2021年にいくつかの新たな旧石器時代遺跡が発見され、その中には、燧石露頭の近くに位置する、単一で複数の層位の開地遺跡である…
45種の言語に対する神経応答パターンの類似性に関する研究(Malik-Moraleda et al., 2022)が公表されました。現在、全世界で7000近くの言語が使われていますが、それよりもはるかに少ない数の言語に関する研究に基づいて、脳内で言語がどのように学習され、処理されるのか、理解されつつあります。この研究は、言語研究におけ…
トリケラトプス(Triceratops horridus)の闘損傷の証拠を報告した研究(D’Anastasio et al., 2022)が公表されました。トリケラトプスは白亜紀の角竜類の恐竜で、頭蓋の頭頂骨と鱗状骨が伸びてできた大きなフリル(襟飾り)を特徴とします。この骨質のフリルについては、別のトリケラトプスとの戦闘中に体を保護し…
シチリア島の古典期ギリシア軍の多様な遺伝的起源を報告した研究(Reitsema et al., 2022)が公表されました。紀元前千年紀に、交易と植民により地中海のヒトの移動が前例のないほど増加しました。戦争は分断する力とみなされることが多いものの、じっさいには文化的接触のもう一つの触媒です。本論文は、ギリシアのシチリア島の植民地ヒメ…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の聴覚に関する研究(Conde-Valverde et al., 2021)が公表されました。絶滅人類の文字記録や音声記録が残っていないため、その言語能力はほとんど明らかにされていません。そこで、頭蓋化石から聴覚の研究が行われ、…
現代人の表現型へのネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の遺伝的影響に関する概説(Reilly et al., 2022)が公表されました。現代人の最も近縁な絶滅近縁種であるネアンデルタール人は、ユーラシア西部に40万年前頃から絶滅した4万年前頃まで暮らしていました。古代の標本から回収されたDNAにより、ネア…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、ヒトの腸由来の古代の微生物ゲノムに関する研究(Wibowo et al., 2021)が報道(Olm, and Sonnenburg., 2021)されました。工業社会集団における腸内微生物の多様性の喪失はヒトの代謝や免疫系の生物学的挙動に大きな影響を与え、慢性疾患と関連づけられており、現代…