大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第41回「義盛、お前に罪はない」

 今回は和田義盛の乱が描かれました。和田義盛は北条義時と和睦したつもりでしたが、義盛の息子たちが暴走して戦いになる、という展開です。今回の合戦場面はそれなりの長さで、なかなか力の入ったものだったように思います。和田義盛の乱は、鎌倉での合戦としては本作では最大規模だと思いますので、もう少し長めの描写でもよかったかな、とも思いますが、この後…
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ブリテン島の上部旧石器時代後期の2個体の異なる遺伝的構成

 ブリテン島の上部旧石器時代後期の2個体の異なる遺伝的構成を報告した研究(Charlton et al., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究はすでに、人間進化研究ヨーロッパ協会第12回総会で概要が報告されていました(関連記事)。上部旧石器時代ヨーロッパの遺伝学的調査は、ヒト集団の移動と複…
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坂野徹『縄文人と弥生人 「日本人の起源」論争』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2022年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は「縄文人」と「弥生人」に関する、進展著しい古代DNA研究も含めて人類学と考古学最新の研究の解説ではなく、おもに1990年代までの「日本人起源論」が、同時代の思潮からどのように影響を受けて提示されたのか、検証した学説史です。本書は、これまで…
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初期恐竜の分布を形成した気候帯

 初期恐竜の分布を形成した気候帯に関する研究(Griffin et al., 2022)が報道されました。中生代および新生代の陸上生態系を形成することになる脊椎動物の系統は、三畳紀のパンゲア超大陸各地で出現しました。この超大陸において、汎存性の「災害動物相」は、後期三畳紀(カーニアン期、約2億3500万年前)までに固有性の高い集合に取っ…
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ブリテン島における後期氷期旧石器時代人類の遺伝的構成(追記有)

 人間進化研究ヨーロッパ協会第12回総会で、ブリテン島における後期氷期旧石器時代人類の遺伝的構成に関する研究(Charlton et al., 2022)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P24)。以下、年代は暦年代です。近年、多数の研究でユーラシア西部における最初期ヒト集団の一部の遺伝的歴史が調べられ、農耕出…
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初期哺乳類の生活史

 初期哺乳類の生活史に関する研究(Funston et al., 2022)が公表されました。白亜紀末の大量絶滅後、有胎盤哺乳類は急速に多様化して重要な生態的地位を占め、体サイズを増大させましたが、こうした大型化は他の獣類には当てはまりませんでした。この時期に出現した大型草食動物の中では、汎歯目哺乳類が最初期の分類群として知られています…
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フランスとスペイン北部におけるネアンデルタール人と現生人類の共存期間

 フランスとスペイン北部におけるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)の共存期間に関する研究(Djakovic et al., 2022)が公表されました。最近の化石発見により、ネアンデルタール人と現生人類はヨーロッパで5000~6000年間ほど共存していたかもしれない、と…
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第40回「罠と罠」

 今回は和田義盛の乱へと至る過程が描かれました。朝廷からの負担などを不満に思う御家人は最長老格の和田義盛を頼るようになり、これを北条義時も大江広元も危険視して、鎌倉体制維持のために義盛の粛清を決断するわけですが、義時にとっては、鎌倉体制維持と北条の世の確立は同じというか、同じと思い込もうとしているようにも見えます。義時は、単に権勢欲だけ…
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遺伝学的知見から推測されるネアンデルタール人の社会構成

 遺伝学的知見からネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の社会構成を推測した研究(Skov et al., 2022)が公表されました。この研究は昨年すでに、その概要が報道されていました(関連記事)。ネアンデルタール人のこれまでのゲノム解析からは、その人口史や現生人類(Homo sapiens)との関係について…
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Rebecca Wragg Sykes『ネアンデルタール』

 レベッカ・ウラグ・サイクス(Rebecca Wragg Sykes)著、野中香方子訳で、筑摩書房より2022年10月に刊行されました。原書の刊行は2020年です。本書は原書刊行時に話題になり、原書は日本語版より安いと予想されたので(原書のKindle版は2022年10月時点で1834円、本書は3960円)原書で読むことも考えましたが、…
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三畳紀の爬虫類の新たな分類

 三畳紀の爬虫類の新たな分類に関する研究(Foffa et al., 2022)が報道されました。翼竜類は動力飛行(羽ばたき飛行)を進化させた最初の脊椎動物で、後期三畳紀に突然出現してから白亜紀末に姿を消すまで、中生代の陸上生態系を構成する主要な動物群でした。しかし、翼竜類の起源と初期進化については、これらの飛行性爬虫類とそれらに最も近…
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60歳まで減速しないメンタルスピード

 メンタルスピード(心的処理の速度)が60歳まで減速しないことを報告した研究(Krause et al., 2022)が公表されました。加齢につれて、環境中の変化(刺激)に反応する時間は長くなるのが一般的です。こうした反応時間は20歳頃から遅くなっていき、加齢につれて徐々に長くなっていく。この研究は、認知課題に対する反応時間を測定するオ…
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『卑弥呼』第11集発売

 待望の第11集が発売されました。第11集には、 口伝79「誕生」 https://sicambre.seesaa.net/article/202201article_22.html 口伝80「争い」 https://sicambre.seesaa.net/article/202202article_4.html …
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ヒト脳モデルの改良

 ヒト脳モデルの改良に関する研究(Revah et al., 2022)が公表されました。自己組織化する神経オルガノイドは、ヒトの発生や疾患のモデルとなり得る有望な生体外(in vitro)構築基盤(プラットフォーム)です。しかし、オルガノイドは生体外に存在するような神経結合を欠くため、成熟に限界があり、行動を制御する他の回路との統合は…
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第39回「穏やかな一日」

 前回で北条時政とその妻の「りく」が退場し、今回から最終章に入った、という感じです。執権となった北条義時の北条主導の強引な政治運営に三浦義村や和田義盛など多くの御家人は不満を抱き、これが和田義盛の乱につながるのでしょうが、三浦義村は和田義盛の乱でけっきょく和田義盛を「裏切る」わけで、義時を裏切るというか反北条側に与すると期待されてけっき…
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アングロ・サクソン時代におけるヨーロッパ大陸部からブリテン島への大規模な移住

 アングロ・サクソン時代におけるヨーロッパ大陸部からブリテン島への大規模な移住に関する研究(Gretzinger et al., 2022)が公表されました。ブリテン諸島の歴史は、ローマ帝国支配の終焉後の重大な変化をはじめとする、文化を大きく変転させた複数の時代によって特徴づけられ、これが、言語や定住パターンや物質文化の移り変わりを促進…
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岡本隆司『悪党たちの中華帝国』

 新潮選書の一冊として、新潮社から2022年8月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、「悪党」に焦点を当てた中国史です。本書の「悪党」は、悪名高い人物という一般的な意味合いですが、悪評が定着しているような人物でも実は「悪党」ではないとか、悪評がなくとも本当「悪党」だったとか、客観的実像を検証しつつ、悪評の背景も探られています。…
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社会的に学習されているかもしれない野生チンパンジーの道具使用

 野生チンパンジーの道具使用の社会的学習の可能性を報告した研究(Koops et al., 2022)が公表されました。ヒトは道具使用などの技能を、相互観察により学習します。ヒトの文化は、こうした社会的学習を通して次第に複雑化してきました。しかし、こうした累積的な文化がヒトに特有のものかどうかについては、議論が続いていますい。飼育下の非…
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旱魃によるマヤパンの崩壊

 旱魃によるマヤパンの崩壊に関する研究(Kennett et al., 2022)が公表されました。先コロンブス期のメソアメリカでは、降水量が食料生産に及ぼす影響は、人間の移住や人口減少や戦争や政権交代と密接に関連していた可能性がありますが、そのために気候の圧力に直面したさいの回復力や変化や持続可能性がもたらされた可能性もあります。12…
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ウズベキスタン東部の天山山脈西部の旧石器

 ウズベキスタン東部の天山山脈西部の旧石器を報告した研究(Pavlenok et al., 2022)が公表されました。本論文は、天山山麓西部のチャトカル(Chatkal)における山岳調査の予備的結果を提示します。2021年にいくつかの新たな旧石器時代遺跡が発見され、その中には、燧石露頭の近くに位置する、単一で複数の層位の開地遺跡である…
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45種の言語に対する神経応答パターンの類似性

 45種の言語に対する神経応答パターンの類似性に関する研究(Malik-Moraleda et al., 2022)が公表されました。現在、全世界で7000近くの言語が使われていますが、それよりもはるかに少ない数の言語に関する研究に基づいて、脳内で言語がどのように学習され、処理されるのか、理解されつつあります。この研究は、言語研究におけ…
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トリケラトプスの闘損傷の証拠

 トリケラトプス(Triceratops horridus)の闘損傷の証拠を報告した研究(D’Anastasio et al., 2022)が公表されました。トリケラトプスは白亜紀の角竜類の恐竜で、頭蓋の頭頂骨と鱗状骨が伸びてできた大きなフリル(襟飾り)を特徴とします。この骨質のフリルについては、別のトリケラトプスとの戦闘中に体を保護し…
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シチリア島の古典期ギリシア軍の多様な遺伝的起源

 シチリア島の古典期ギリシア軍の多様な遺伝的起源を報告した研究(Reitsema et al., 2022)が公表されました。紀元前千年紀に、交易と植民により地中海のヒトの移動が前例のないほど増加しました。戦争は分断する力とみなされることが多いものの、じっさいには文化的接触のもう一つの触媒です。本論文は、ギリシアのシチリア島の植民地ヒメ…
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横山宏章『孫文と陳独秀 現代中国への二つの道』

 平凡社新書の一冊として平凡社より2017年2月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、中国近代史における対照的な二人の人物として、孫文と陳独秀を取り上げ、近代中国の歴史的背景と課題を浮き彫りにします。民族主義と民権主義を主張しながら、愚かな大衆は賢者に導かれるべき存在と考え、国家体制の革命を強調し、現在の用語では「開発独裁」的…
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ネアンデルタール人の聴覚

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の聴覚に関する研究(Conde-Valverde et al., 2021)が公表されました。絶滅人類の文字記録や音声記録が残っていないため、その言語能力はほとんど明らかにされていません。そこで、頭蓋化石から聴覚の研究が行われ、…
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シルル紀の魚類化石が示す有顎脊椎動物の台頭

 中国南部で新たに発見された前期シルル紀(約4億3900万~4億3600万年前)の大量の保存状態良好な魚類化石を報告した四つの研究が報道されました。分子的研究からは、現生脊椎動物の99.8%以上を占めている、顎口類としても知られている有顎脊椎動物の起源は、遅くとも後期オルドビス紀(約4億5000万年前)だった、と示唆されています。そうし…
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今年のノーベル生理学・医学賞はスヴァンテ・ペーボ氏

 今年(2022年)のノーベル生理学・医学賞はスヴァンテ・ペーボ(Svante Pääbo)氏に授与される、と発表されました。ペーボ氏は、現在すでに大きな成果を挙げている古代DNA研究を、その技術面も含めて確立した功績者なので、この受賞を歓迎する人は多そうですし、古代DNA研究に強い関心を抱いている私にとっても、たいへん嬉しい受賞です。…
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現代人の表現型へのネアンデルタール人の遺伝的影響

 現代人の表現型へのネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の遺伝的影響に関する概説(Reilly et al., 2022)が公表されました。現代人の最も近縁な絶滅近縁種であるネアンデルタール人は、ユーラシア西部に40万年前頃から絶滅した4万年前頃まで暮らしていました。古代の標本から回収されたDNAにより、ネア…
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第38回「時を継ぐ者」

 今回は北条時政とその妻の「りく」の失脚が描かれました。時政はあっさりと降参を決断し、この企ては最初から無謀だと分かっていながら、妻の「りく」を見捨てることができず、息子の義時の成長もあり、後を託そうと考えて死ぬ覚悟で決起したのでしょう。皆が喜ぶ姿を見たい、という人の好さが時政にはあり、それは急成長した鎌倉で宰相的役割を担うことになって…
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ヒトの腸由来の古代の微生物ゲノム

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、ヒトの腸由来の古代の微生物ゲノムに関する研究(Wibowo et al., 2021)が報道(Olm, and Sonnenburg., 2021)されました。工業社会集団における腸内微生物の多様性の喪失はヒトの代謝や免疫系の生物学的挙動に大きな影響を与え、慢性疾患と関連づけられており、現代…
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森恒二『創世のタイガ』第10巻(講談社)

 本書は2022年9月に刊行されました。第10巻は、主人公たち現生人類(Homo sapiens)側とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)側(とはいっても、その指導者は第二次世界大戦の戦場(ドイツとフランスの国境付近)から来たドイツ人ですが)との戦いを中心に描かれました。これまで、現生人類側は盾を持っておりネ…
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