ネアンデルタール人の彫刻

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の彫刻に関する研究(Leder et al., 2021)が報道されました。アフリカやユーラシア大陸の初期現生人類(Homo sapiens)には、芸術や象徴的行動に関する多くの証拠がありますが、現生人類と近縁のネアンデルタール…
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動物と菌類の起源

 動物と菌類の起源に関する研究(Ocaña-Pallarès et al., 2022)が公表されました。動物と菌類の形態は根本的に異なりますが、両者はオピストコンタ(Opisthokonta)という同じ真核生物の巨大系統群内で進化し、菌類は植物よりも動物の方と近縁です。この研究は、オピストコンタの系統発生できわめて重要な位置を占める4…
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最古となるタバコの使用の証拠

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、最古となるタバコの使用の証拠を報告した研究(Duke et al., 2022)が公表されました。タバコ(Nicotiana)はアメリカ大陸原産の酩酊性の植物で、北アメリカ大陸の多くの先住民集団の伝統に重要な役割を果たしてきました。現在タバコは世界的に使用されており、人間社会に広範な影響を及ぼしてい…
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第37回「オンベレブンビンバ」

 今回は北条時政とその妻の「りく」による陰謀が中心に描かれました。畠山重忠討伐により鎌倉で時政の評判が悪化し、義時を中心に幕府中枢はあからさまに時政を排除していきます。執権の座にありながら実権を失いつつあり焦る時政に息子の義時は引き際を考えるよう警告しますが、それにより親子の溝はさらに深まります。時政は義時に、源頼朝に似てきた、と言いま…
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大相撲秋場所千秋楽

 今場所も大関陣が不調で、横綱の照ノ富士関も膝の状態がかなり悪かったようで途中休場となり、大荒れとなりましたが、もはや(番付を考えると)荒れることが常態となり、驚きはなく、競技としての側面では楽しめるので、まあこうした混戦も悪くはない、と思います。ただ、大相撲文化の根底にある番付の機能低下が著しいとも言えるわけで、私はかなり保守的な人間…
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遠オセアニア西部現代人の遺伝的構造

 遠オセアニア(リモートオセアニア)西部現代人の遺伝的構造に関する研究(Arauna et al., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。バヌアツ諸島は、3000年前頃となる無人地への最も広範なヒトの移住の一つにおける、遠オセアニア(リモートオセアニア)への入口として機能しました。古代DNA研究は、…
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井上文則『シルクロードとローマ帝国の興亡』

 文春新書の一冊として、文藝春秋社より2021年8月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、ローマ帝国の興亡はユーラシア大陸規模の出来事と関連しており、それはユーラシアの東西を結んだシルクロード交易盛衰だった、との壮大な想定に基づいており、広範な地域を対象とするだけに各地域および事象について専門家の異議はあるでしょうが、歴史学が…
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ボルネオ島の後期更新世人類遺骸の外科的切断の痕跡

 ボルネオ島のインドネシア領となる東カリマンタン州のリャン・テボ(Liang Tebo)洞窟(図1)で発見された後期更新世現生人類(Homo sapiens)遺骸の外科的切断の痕跡を報告した研究(Maloney et al., 2022)が公表されました。医学の発展に関しては、1万年前頃となる定住農耕社会の出現(いわゆる新石器革命)によ…
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サヘラントロプス・チャデンシスの二足歩行の証拠

 サヘラントロプス・チャデンシス(Sahelanthropus tchadensis)の二足歩行の証拠を報告した研究(Daver et al., 2022)が公表されました。二足歩行は人類クレード(単系統群)を規定する重要な適応の一つです。二足歩行の証拠は、600万年前頃となるアフリカ東部の後期中新世人類とされるオロリン・トゥゲネンシス…
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『卑弥呼』第95話「鏡奇譚」

 『ビッグコミックオリジナル』2022年10月5日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハが金砂(カナスナ)国への出陣を筑紫島諸国の王と兵士に告げるところで終了しました。今回は、暈(クマ)の国の夜萬加(ヤマカ)にて、洞窟の奥深くの部屋でヒルメが民の訴えを聞いている場面から始まります。訴えてきたのはホデリという男性で、部屋の外にはタマヨリという…
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アジア中央部現代人におけるタリム盆地のミイラからの遺伝的影響

 アジア中央部現代人におけるタリム盆地のミイラに代表される集団からの遺伝的影響に関する研究(Dai et al., 2022)が公表されました。アジア中央部人の多様性は、複数の移住と文化拡散により形成されてきました。古代DNA研究は青銅器時時代以来のアジア中央部人の人口統計学的変化を明らかにしてきましたが、アジア中央部現代人への古代の人…
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第36回「武士の鑑」

 今回は畠山重忠の最期が描かれました。畠山重忠は初回から登場し、好漢として描かれてきただけに、追い込まれていく過程とその最期は丁寧に描かれていました。畠山重忠を格好よく描こう、という制作側の意図は初回から窺えただけに、畠山重忠の最期は後半第一の山場になるのではないか、と予想していましたが、本作ではこれまででも有数の規模の野外ロケとなり、…
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中国の人類進化観と民族主義

 中国の人類進化観と民族主義に関する研究(Cheng., 2017)が公表されました。本論文の刊行は5年前ですが、最近になって知り、中国の人類進化観と民族主義は以前より関心のある問題だったものの(関連記事1および関連記事2)、断片的な情報しか得ておらず、よく理解できていなかったので、この問題について具体的な情報が多く体系的に解説している…
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井上文則『評伝 宮崎市定 天を相手にする』

 2018年7月に国書刊行会より刊行されました。著者は以前の著書『軍人皇帝のローマ 変貌する元老院と帝国の衰亡』にて、ローマ帝国の変容・衰退を時代の近い漢王朝やもっと広く中華地域の変容と比較し、ローマ帝国の変容・衰退の性格を論じており(関連記事)、宮崎市定氏への傾倒が窺えましたが、東洋史専攻ではないのに宮崎氏の評伝を執筆したのには驚きま…
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渡辺知保(2021)「人新世:ヒトが地球を変える時代」

 井原泰雄、梅﨑昌裕、米田穣編『人間の本質にせまる科学 自然人類学の挑戦』所収のコラムです。地質学的な時代区分では、現在は完新世とされます。しかし、すでに2000年の時点で、完新世はすでに終わって新たな時代区分に入っており、それを人新世と呼ぶのが妥当ではないか、との見解が提示されていました。本論文の執筆時点(2020年12月)では、人新…
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竹沢泰子「人種と人種差別 文化人類学と自然人類学の対話から」

 井原泰雄、梅﨑昌裕、米田穣編『人間の本質にせまる科学 自然人類学の挑戦』所収の論文です。人種は一般的に、皮膚の色をはじめとして、頭髪や身長や頭の形や血液型など形質的な特徴による区分単位とされ、現代日本社会では、コーカソイド(白色人種)とモンゴロイド(黄色人種)とネグロイド(黒色人種)の3人種に区分されます。こうした概念は社会に広く深く…
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翼竜の羽毛の色彩パターン

 翼竜の羽毛の色彩パターンエピに関する研究(Cincotta et al., 2022)が公表されました。中生代の化石の保存状態がきわめて良好な軟部組織から、羽毛の進化に関して多大な知見が得られおり、翼竜類の分岐構造を持つ羽毛(ピクノファイバー)に関する新たな証拠から、羽毛が前期三畳紀に翼竜類と恐竜類の祖先である鳥中足骨類(Avemet…
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漢代の新疆住民の学際的研究

 中華人民共和国新疆ウイグル自治区(以下、新疆)の漢代住民の学際的分析結果を報告した研究(Allen et al., 2022)が公表されました。古代中華帝国の国境地帯では、漢人と非漢人の相互作用が深く根付いていました。しかし、これら国境の人々の遺伝的起源もしくは生活様式についてはほとんど知られていません。この研究は、古代DNAと安定同…
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第35回「苦い盃」

 今回は、源実朝の結婚と、北条時政と畠山重忠との対立の激化が描かれました。実朝の正室である千世は顔見世程度の出番で、まだ人となりがほとんど描かれていませんが、実朝との夫婦関係はどうなるのでしょうか。時政と重忠との対立は、平賀朝雅の策謀により激化していき、「りく」が時政を煽っていくところはある程度予想通りでしたが、重忠の息子の重保が平賀朝…
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ヨーロッパ南部とアジア南西部の大規模な古代ゲノム研究

 ヨーロッパ南部とアジア南西部に関する3つの大規模な古代ゲノム研究が公表されました。それは、ヨーロッパ南部とアジア南西部の古代から中世の人類遺骸の古代ゲノムデータを報告した研究(Lazaridis et al., 2022A)と、メソポタミア古代人のゲノムデータを報告した研究(Lazaridis et al., 2022B)と、総説的な…
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高橋のぼる『劉邦』第14集(小学館)

 電子書籍での購入です。第14集は、広武山で劉邦率いる漢軍と項羽率いる楚軍が対峙するなか、項羽が劉邦を弩で射抜いた場面から始まります。劉邦は瀕死状態に陥りますが、何とか回復します。しかし、漢軍兵士の動揺は激しく、案じた蕭何は、兵士の前で無事であると振舞うよう進言し、劉邦は盧綰の助けを借りて何事もなかったかのように兵士の前で振舞います。兵…
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米田穣「考古学と自然人類学 縄文時代・弥生時代の生業を考える」

 井原泰雄、梅﨑昌裕、米田穣編『人間の本質にせまる科学 自然人類学の挑戦』所収の論文です。植物(作物)栽培化(domestication)は、食料獲得から食料生産への移行という人類史において大きな画期となります。なお、動物の家畜化も英語では同じ単語(domestication)が用いられます。ただ、動物の家畜化と植物の栽培化(農耕)とを…
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ホオジロザメとの競合によるメガロドンの絶滅

 メガロドン(Otodus megalodon)の絶滅の一因はホホジロザメ(Carcharodon carcharias)との競合かもしれない、と指摘した研究(McCormack et al., 2022)が公表されました。動物の栄養水準は生態系内での位置を示しており、食餌は動物の生活様式や生態を理解する上で重要な役割を果たします。動物…
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中世のアシュケナージ系ユダヤ人のゲノムデータ

 中世のアシュケナージ系ユダヤ人のゲノムデータを報告した研究(Brace et al., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、イギリスのノリッジ(Norwich)遺跡の中世の井戸の底で発掘された6個体のゲノム配列データを報告します。これらの遺骸の改定放射性炭素年代分析は、歴史的に確認された…
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『卑弥呼』第94話「豊日別会議」

 『ビッグコミックオリジナル』2022年9月20日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハがイクメに、鬼国(キノクニ)の背後に吉備(キビ)がいるなら吉備の王の首を刎ね、吉備の背後に日下(ヒノモト)がいれば日下の王の首を必ず獲る、と力強く宣言ところで終了しました。今回は、ヤノハとイクメが、菟狭(ウサ、現在の大分県宇佐市でしょうか)と穂波(ホミ)…
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第34回「理想の結婚」

 今回は政争へとつながる確執が描かれました。北条時政は執権となり鎌倉において御家人筆頭的な立場となったことで権勢を振るうようになり、すっかり浮かれています。時政は息子の義時の諫言も疎ましく思うようになり、これが両者の対立と時政の失脚につながっていくのでしょう。時政の失脚の要因として畠山重忠討伐もあったようですが、前回と今回で時政と重忠と…
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現生人類の起源の見直し

 現生人類(Homo sapiens)の起源を再検討した研究(Bermúdez de Castro, and Martinón-Torres., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。現生人類、および現生人類とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)との最終共通祖先(LCA)の…
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坂野潤治『近代日本の構造 同盟と格差』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2018年5月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は近代日本の基本的な対立を、「日英同盟」と「日中親善」、「民力休養(地租軽減)」と「格差是正」の二つの観点から検討します。本書のこの問題設定は、2010年代の日本の政治経済と外交を強く意識しています。つまり、2012年12月に成立した第二次…
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1000年前頃のクラインフェルター症候群

 1000年前頃のクラインフェルター症候群の個体を報告した研究(Roca-Rada et al., 2022)が公表されました。ポルトガル北東部の中世のトーレ・ヴェーリャ(Torre Velha)遺跡で1000年以上前に埋葬されたヒト骨格が、分析され、調べられました(図1)。以下は本論文の図1です。  調査の結果、死亡時に25歳以…
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古人類学の記事のまとめ(47)2022年5月~2022年8月

 2022年5月~2022年8月のこのブログの古人類学関連の記事を以下に整理しておきます。なお、過去のまとめについては、2021年9月~2021年12月の古人類学関連の記事の後に一括して記載します。私以外の人には役立たないまとめでしょうが、当ブログは不特定多数の読者がいるという前提のもとに執筆しているとはいえ、基本的には備忘録的なもので…
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